オレオレ詐欺で現金150万円をだまし取られた女性。「どうしてもという時のための大切なお金だった。同じ目に遭う人を出したくない」と体験を語った=2月、岐阜県警本部

 被害が後を絶たないニセ電話詐欺で、子や孫ら親族を装って金を無心する「オレオレ詐欺」の手口が昨年夏以降、岐阜県内で目立っている。事前に病院の医師を名乗る犯人が電話をして、親族が「喉の病気」にかかっていると思い込ませた上で、電話をかけた親族役の犯人の声に違和感を持たせないようにする狡猾(こうかつ)な手口。県警生活安全総務課は実際の音声データを公開し、警戒を強めるよう呼び掛けている。

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 「息子さまの喉にですね、ポリープが見つかっておりまして」。昨年10月、自宅の固定電話に出た県内に暮らす80代女性は、大学付属病院の「耳鼻咽喉科のヤマシタ」を名乗る男から突然、告げられた。動揺を隠せない女性。男は畳み掛ける。「咽頭がんや喉頭がんに転移する可能性がございまして」。息子が精密検査を受けたとうそをつき「5、6時間程度は声がガラガラ聞き取りづらい」と説明した。

 その後、息子役の男から電話が掛かってきた。心配する女性に「検査結果が出るまで誰にも言わないで」と何度も繰り返し、第三者に相談して詐欺だと見抜かれないよう布石を打つ。そして財布と携帯電話をなくしたため「今日中に納めなければいけないお金を払えなくなった」とまことしやかに話す。現金を用意させて、恩人の息子が家まで取りに行くと告げた。

 県警が公開した音声データを聞くと、途中で病院の警備員が登場したり、効果音として救急車のようなサイレンが使われたりと、犯人グループの手の込んだやり口が分かる。幸い女性は同居する孫に止められ、被害には遭わなかった。だが、県警生活安全総務課によると、同様の手口での被害は昨年7月以降、岐阜県内で6件確認されており、今年1月には2件の被害があった。

 現金150万円をだまし取られた東濃地方の女性(64)は「病気になった身内になんとかしてあげたい、という純粋な気持ちを利用された。すごく悔しい」と唇をかんだ。女性は1月、「弟さんが咽頭がんで手術することになった」と大学病院の医師を名乗る男から電話で告げられ、その後、電話をかけてきた弟役の犯人に金を無心され、言われるがまま自宅を訪れた男に現金を渡してしまった。「麻酔を打って声が変、という医師の言葉が暗示になって。信じてしまった」とぽつり。「自分は絶対に被害に遭わない、と思っていたけどそれが甘かった。手口についても新聞を見て覚えるなどして警戒していた。でも(犯人側の)話術にはまってしまった」と振り返る。

 県内のニセ電話詐欺被害は昨年、218件を認知。前年から約1.5倍にはね上がり、約2億8千万円がだまし取られた。そのうち、近年下火になっていたオレオレ詐欺は新たな手口により増加に転じた。昨年は17件(前年比13件増)で被害額は3641万円(2857万円増)に上った。

 県警生活安全総務課は不審な電話を受けた際、必ず一度、電話を切って身近な人に相談することを求めている。在宅時も常に留守番電話にして知らない人からの電話には出ないことも推奨している。