試合前、町田の黒田監督は「おまえらプロの前でこの話をするのは申し訳ないけど」と選手に切り出した。「決勝は、前半15分までに必ず動く」。青森山田高を率いて全国選手権を3度制した監督の教訓だった。その見立て通り、前半6分の先制点で試合は動いた。
ロングスローの跳ね返りを拾った中山が左を突破してクロスを送る。藤尾が押し込み、ネットを揺らした。前半32分には相馬が追加点。試合開始直後から前へと蹴り込んで圧力をかけ、神戸が目覚める前に一気にリードを広げる。予言のような展開だった。
先制のきっかけとなったロングスローは青森山田高の代名詞だった。町田で多用し始めた頃は批判を浴びた。プロでも効果的と分かると、今はJ1でも他チームが同じことをやる。就任時に「プロで通用するのか」と懐疑的な目を向けられた指導者が認められた証しにも映る。
黒田監督は指示を実行してくれた選手に「高校サッカーの迷信だと思わず、信じてくれた」と感謝した。










