~ 重要なインフラが非常時・災害時にも機能するように ~
NITE(ナイト)[独立行政法人 製品評価技術基盤機構 理事長:長谷川 史彦、本所:東京都渋谷区西原]は、令和7年12月23日、「公共調達・重要インフラ向け蓄電池システムの安全ガイドライン」の暫定版を公表しました。
https://www.nite.go.jp/gcet/nlab/infra-guideline.html
このガイドラインは、行政サービスや情報通信、電力等の重要インフラに用いられる蓄電池システムの非常時・災害時等に求められる安全要件を記載しています。
近年、蓄電池システムの事故が増加しており、再生可能エネルギー導入に伴い蓄電池システムがさらに普及することにより、事故件数の増加も予想されます。一方、非常時・災害時等の蓄電池システムの安全性に関する基準はありません。地方公共団体等にこのガイドラインを活用いただき、安全な蓄電池システムの導入が進むことで、非常時・災害時にも蓄電池の発火・破裂等の二次災害を防ぎ、重要インフラの機能が維持されることが期待されます。
なお、本ガイドラインは、試験方法や判断基準を含む別紙を加えて確定版となります。本ガイドラインの確定版の公表は、令和8年5月頃を予定しています。
1.ガイドライン策定の背景
私たちの生活や経済活動はさまざまなインフラによって支えられていますが、特に行政サービスや情報通信、電力等は、その機能が停止/低下した場合に大きな影響があり、重要インフラと位置づけられます。蓄電池システムは、行政機能維持や通信基地局のバックアップ電源として使用されたり、再生可能エネルギーの導入拡大に伴う電力負荷平準化※1に用いられたりしており、重要インフラの機能維持を支える存在です。
しかし、蓄電池システムの事故は国内外で発生しており、NITEの独自調査では、水没させただけで発煙することが確認されるなど、地震や洪水等の災害発生時に事故に至るおそれの高い蓄電池システムが市場に流通していることが危惧されます。
また、非常時・災害時の蓄電池システムの安全性に関する基準がない中、経済産業省の蓄電池産業戦略推進会議では、LIB(リチウムイオン電池)以外も含めた健全かつ多様な定置用蓄電池システムの導入を促進するために、NITEに対して2026年を目処に蓄電池システムの安全性や信頼性の向上に向けたガイドライン作成を求めています。
加えて、我が国における再生可能エネルギー発電電力量の割合は、2040年度には4~5割に増加する見込みであり、今後ますます蓄電池システムの地方公共団体や電力関連施設等への導入が進むことが見込まれます。
表の出典:経済産業省 資源エネルギー庁
https://www.meti.go.jp/press/2024/02/20250218001/20250218001.html
2.ガイドラインの概要
地震や台風などの非常時・災害時においても、衝撃や浸水による発火・破裂等の二次災害を起こさず、重要インフラの機能維持/早期復旧に資するような、重要インフラ用蓄電池システムを我が国において広く活用できるよう、このたび、NITEは「公共調達・重要インフラ向け蓄電池システムの安全ガイドライン」の暫定版を作成・公表しました。
https://www.nite.go.jp/gcet/nlab/infra-guideline.html
このガイドラインは、非常時・災害時等に求められる重要インフラ用蓄電池システムの安全要件を記載しています。
本ガイドラインは、防災に関わる国際規格であるISO 37179 : 2024(スマートコミュニティインフラー防災ー実施のための基本枠組み)を参考にしました。このISO規格は、 仙台防災枠組※2を踏まえて防災を考慮したインフラの計画・建設・活用・維持・改善のための原則と基本要件をまとめた国際規格で、事前防災への投資を行うことで、災害リスクを軽減(DRR: Disaster risk reduction)させるとともに、災害後に速やかに回復することを目指しています。
本ガイドライン中の具体的な安全要件としては、例えば、耐地震波衝撃については以下のような要件を定めています。
| Class 3 | 震度7の地震振動後に発火・破裂及び有害物による周辺への影響につながるような事象がないこと。 |
| Class 2 | 震度6弱以上震度6強以下の地震振動後に発火・破裂及び有害物による周辺への影響につながるような事象がないこと。 |
| Class 1 | 各種法令等を遵守し、震度5強以下の地震振動後に発火・破裂及び有害物による周辺への影響につながるような事象がないこと。 |
蓄電池メーカや蓄電池システムインテグレータが、このガイドラインに沿ってモノづくりを行い、地方公共団体等が、ガイドラインを参照して作成した調達仕様書や補助金交付要綱によりそれらの製品を調達することで、非常時・災害時においても二次災害を起こさず継続使用できる重要インフラ用蓄電池システムが我が国に普及することが期待されます。これは、非常時・災害時においても行政サービスや情報通信、電力等の重要インフラの機能が維持されることにつながります。
なお、NITEでは、「蓄電池システム産業の将来に関する検討委員会」を設置し、我が国の蓄電池システム産業界の課題やその解決策について議論していますが、本ガイドライン策定のため、その委員会の下に「公共調達・重要インフラ向け蓄電池システムの安全ガイドライン検討ワーキンググループ(座長:東北大学 今村教授)」及び「公共調達・重要インフラ向け蓄電池システムの安全ガイドラインに関する試験手法開発ワーキンググループ」を設置しました。前者のワーキンググループでは、ユーザー目線で本文(重要インフラ用蓄電池システムの安全要件)を審議し、後者のワーキンググループでは、別紙(ガイドライン本文で記載される要件に対する試験方法・判断基準等)を審議しています。
今般、地方公共団体やインフラ事業者等の皆様に、いち早くご活用を検討いただくために、暫定版を公表しました。
別紙を含むガイドラインの確定版の公表は、令和8年5月頃を予定しています。
※1蓄電池システムによる電力負荷平準化
電力需要が低い時に蓄電池を充電し、電力需要が高い時に放電することで、ピーク電力を削減し、電力需要の変動を平準化すること。
※2仙台防災枠組
第3回国連防災世界会議(2015年3月に仙台市で開催)で採択され、2015年6月の国連総会で承認された、2030年までの国際的な防災指針。












