技術情報の積極的な発信が契約・売り上げに寄与すると技術者の7割が実感

2025年12月24日
株式会社電通PRコンサルティング

技術者500人を対象にした技術広報に関する実態調査

 

技術情報の積極的な発信が契約・売り上げに寄与すると技術者の7割が実感

一方で、技術者の約7割が技術情報を効果的に“発信できていない”と回答

研究開発・技術部門と広報部門の連携強化が求められる

 

 株式会社電通PRコンサルティング(本社:東京都港区、代表取締役社長執行役員:山口恭正、以下「電通PRC」)は、自社の研究開発や技術情報の対外的な発信(技術広報)に関する実態と技術者の意識を明らかにすることを目的に、2025年7月末から8月中旬にかけて、技術者※500人を対象とした『技術広報に関する実態調査』を実施しました。調査結果のポイントは以下の通りです。

※20代~60代の大学の理系学部・研究科卒業者で、外部発注先・協業先選定に関わる人

 

調査結果のポイント

1.上場企業の技術者の約4割が「以前よりも情報発信が積極的になった」と回答。そのうち約7割が契約増、売り上げ増に「つながった」と実感

ー研究開発や技術情報の積極的な情報発信について、東証プライム上場企業の技術者の45.6%が 「以前より積極的」と回答。上場していない企業の回答が2割(22.7%)と20ポイント以上の開きあり。

 ー 情報発信が「以前より積極的」な企業では、「契約増、売り上げ増につながった」という回答が67.0%だったのに対して、「以前より消極的」な企業は28.6%と40ポイント近い差が見られた。

 ー 技術者が感じている「技術広報」の目的として、BtoB企業では投資や採用での「注目・期待上昇」、BtoC企業では幅広いステークホルダーの「態度変容」に重点が置かれる傾向が見られた。

 

2.技術者の約7割が研究開発力や技術力があるのに、情報発信していない・情報発信の仕方に課題ありと回答

 ー 技術者の約7割が研究開発力や技術力があるのに情報発信していないことについて、もったいないと感じている(70.2%)。

 ー 研究開発や技術部門も主体的に情報発信に関わるべきだと、技術者全体の7割が技術広報に対して関心が高まっている。

 

3.研究開発部門・技術部門と広報部門の連携強化が今後の課題

連携がもたらす効果として、技術者のリテンションが高まる結果が明らかに

 ー 自社の広報部門の印象について「研究開発部門や技術部門と連携できている」「研究開発部門や技術部門の取り組みについて、理解できている」と回答した技術者は半数程度にとどまる。

 ー 技術部門と広報部門が連携することで、両部門の親和性が高まる効果として、技術者の自社への誇りや、リテンション(就労意欲)などの高まりなど自社へのポジティブな影響を及ぼす。

 

主な調査結果

1.上場企業の技術者の約4割が「以前よりも情報発信が積極的になった」と回答

そのうち約7割が契約増、売り上げ増に「つながった」と実感

 企業において外部発注先・協業先選定に関わる技術者500人に対し技術広報に関する実態を調査。

自社の研究開発や技術情報の対外的な発信(技術広報)が、「以前より積極的になってきていると思う」と回答したのは全体で35.2%。上場市場別で見ると、東証プライム企業(「以前より積極的になってきていると思う」45.6%)、東証スタンダード企業(同40.0%)上場していない企業(22.7%)と、上場している企業と上場していない企業では、約20ポイントの差があることが明らかになりました。

 

 

 さらに、研究開発や技術情報の対外的な発信(技術広報)が「以前よりも積極的になっていると思う」と答えた企業の67.0%(67.0%=強くそう思う21.0%+ややそう思う46.0%)が契約増、売り上げ増につながったとしており、技術広報における情報発信の巧拙が企業の業績にも大きく寄与していることが明らかになりました。

 

 

技術者が感じている「技術広報」の目的として、BtoB企業では投資や採用での「注目・期待上昇」、BtoC企業では幅広いステークホルダーの「態度変容」に重点

 今回の調査では、上場企業に所属する技術者が感じている「技術広報の成果」について、企業の業態(BtoB・BtoC)ごとに特徴が異なるという仮説の下、探索的な因子分析により、広報活動に対して潜在的に感じている目的意識の抽出を行いました。その結果、抽出された共通因子や寄与率などから、以下の特徴が明らかになりました。

 

Point① BtoB企業は「投資や採用での注目・期待上昇」を目的とする傾向

 BtoB企業に所属する技術者は自社の技術広報について、「株主・投資家からの問い合わせ増加」「採用応募の増加」等の成果を感じており、その背景には、企業に対する注目や期待の上昇を目的として情報発信をしている傾向があると推測されます。

 

Point② BtoC企業は「認知や評価の向上・態度変容」を目的とする傾向

 BtoC企業に所属する技術者は自社の技術広報について、「採用市場でのイメージ醸成」「株価の上昇(投資家からの評価向上)」「顧客・取引先の新規獲得」等の成果を感じており、その背景には、さまざまなステークホルダーからの認知・評価の向上に加えて、態度変容を喚起することを目的として情報発信をしている傾向があると推察されます。

 

Point③ BtoC企業は「具体的成果の獲得」をより明示的に意識

 BtoB・BtoC企業ともに、「顧客・取引先からの売り上げ増加」等の具体的な成果も感じており、さらにBtoC企業においては関連する共通因子が独立して見られることから、技術広報において、特にBtoC企業は具体的成果の獲得について、より明示的に意識していると推測されます。

 

Point④ BtoB企業・BtoC企業問わず「社会的評判の構築」を意識

 BtoB・BtoC企業ともに、従業員や知人からの評判向上の他、「研究開発力・技術力への一般的な好印象の醸成」についても成果を感じており、技術広報においては、広く社会的な評判の構築について意識していると推測されます。

 

 

2.技術者の約7割が技術に関する情報発信に対して「もったいない」と感じている

 技術者に対して、研究開発力や技術力の世間の評価は、実績以上に発信のうまさが決め手になると思うか聞いたところ、「世間の評価は実績以上に発信のうまさが決め手になる」で全体75.2%、上場企業79.8%とい約7割強が情報発信のうまさが決め手になると考えていることが分かりました。

 また、「研究開発力や技術力はあるのに、情報発信の仕方が拙くてもったいない」と思う企業あるか聞いたところ、約7割(全体71.8%、と上場企業77.1%)がもったいないと思う企業があると回答しており、情報発信の方法において課題がある点を指摘しています。

 さらに「研究開発力や技術力はあるのに情報発信していなくてもったいない」と思う企業があるか聞いたところ、約7割(全体70.2%、上場企業77.1%)があると回答しており、発信すべき情報が埋もれていることが示唆されます。

 

 

上場企業では約7割強が技術情報を発信したいと思っている

 技術者に情報発信をすることについての考えを聞くと、「自身の関わる研究開発・技術の内容や成果を発信したい」と思う技術者は全体65.8%(Aに近い14.4%+どちらかというとAに近い51.4%)、上場企業70.2% (Aに近い16.0%+どちらかというとAに近い54.2%)、で約7割が発信したいと思っていることが明らかになりました。

 また、技術者自身も主体的に情報発信に関わるべきかでは、全体68.4% (Aに近い13.0%+どちらかというとAに近い55.4%)、上場市場別では特に東証スタンダードで77.1%  (Aに近い11.4%+どちらかというとAに近い65.7%)と東証スタンダード市場の技術者がより必要性を実感している結果となりました。

 

 

3.研究開発部門・技術部門と広報部門の有機的連携が課題

ー自社の広報部門の印象について「研究開発部門や技術部門と連携できている」「研究開発部門や技術部門の取り組みについて、理解できている」と回答した技術者は半数程度にとどまる

 技術者に自社の広報部門のイメージを対比させて質問したところ、「研究開発部門や技術部門と連携できている」が56.0%(Aに近い11.0%+どちらかというとAに近い45.0%)という結果になりました。上場の状況別で広報部門との連携を見ても、東証プライム上場企業で57.4% (Aに近い13.8%+どちらかというとAに近い43.6%)が東証スタンダード51.5%(Aに近い8.6%+どちらかというとAに近い42.9%) 、上場していない企業52.4%(Aに近い7.4%+どちらかというとAに近い45.0%)と上場企業・非上場企業に関係なく部門間の連携にはまだまだ課題があることが明らかになりました。

 

N=500=上場している計(n=262)+上場していない計(n=229)+わからないと回答した計(n=9)の合計

 

広報部門が技術部門の情報発信を後押しし、両部門の親和性を高めることで、技術職のリテンション(継続的な就労意欲)にも影響

ー広報部門に対する印象と自社へのロイヤリティ(所属企業への愛着・忠誠心)との関係を見ると、連携が 取れていると回答した企業の担当者は、会社に対するロイヤリティに対してポジティブに影響していることが数値に表れています。

ー技術者にとって広報部門が「研究開発部門や技術部門の情報発信を後押しする」と回答した回答者の所属企業が、両部門の親和性を高め技術職のリテンション(継続的な就労意欲)に影響していることがうかがわれます。

ーさらに研究開発者や技術者自らが研究や技術に対して対外的な発信を行っている方々はパフォーマンス(職務成果)でポジティブな影響を示しています。また、自社のパーパスに技術が関連付けられている企業の研究者もパフォーマンス(職務成果)にポジティブな影響を与えていると回答しており、組織のエンゲージメント強化に寄与していることが明らかになりました。

 

 

技術者にとって広報部門との有機的連携は自身の職務に対する肯定感を感じさせるだけでなく、リテンション(継続的な就労意欲)にも影響を与えている。

広報部門との連携ができている企業は、「自社への誇り」「友人・知人への勤務先としての推薦意向」 、「自社への継続的な就労意欲」につながっていることが示されました。 (重回帰分析:それぞれ標準偏回帰係数 0.199、0.251、0.236、p<0.01)

 

ーまた、(重回帰分析:それぞれ標準偏回帰係数 0.199、0.251、0.236、p<0.01) 「自社へのロイヤリティ」(関連の5項目を1因子として統合)にもつながっていることを示しています。

  (重回帰分析:標準偏回帰係数 0.206、p<0.01)

 

参考データ

図中の数値は、重回帰分析における標準偏回帰係数 ** p<0.01 * p<0.05

 

※  パフォーマンス(職務成果)については、先行研究の尺度を採用。

  Griffin, M. A., Neal, A., and Parker, S. K.(2007)“A new model of work role performance: Positive behavior in uncertain and interdependent contexts,” Academy of management journal  Vol.50, No.2, pp.327-347.

 

調査概要

技術広報に関する実態調査

20代~60代の大学の理系学部・研究科卒業者で、外部発注先・協業先選定に関わりがある方(500サンプル)

 

調査方法:インターネット調査 2025年7月末~8月中旬

設問内容:技術広報に関する意識と実態、就労意向など