ノコギリクワガタの、本州に生息する個体(左)と八丈島に生息する個体

 大きなアゴが特徴の夏の風物詩ノコギリクワガタ。全国に生息するが、伊豆諸島の八丈島の集団は本州と比べ、アゴが極端に小さいことが知られている。原因は不明だったが、名古屋大などのチームがこのほど、要因となる遺伝子を突き止め、国際科学誌に発表した。平和な八丈島ではえさを巡る戦いが少なく、武器を捨てるかのように進化したとする説を唱えている。

 チームは本州と八丈島の個体について、遺伝情報を網羅的に調べる全ゲノム解析を実施。島の集団では、栄養状態を各器官に伝えるインスリン受容体の遺伝子が変異していた。本州の幼虫でこの遺伝子の働きを抑えると、成長してもオスのアゴが小さく、原因遺伝子の一つと特定した。

 研究を率いた名古屋大院の岸野紘大さん(25)は「ゲノムは生物のつくり方が書かれたレシピ本。読めば発達の原因が分かる」と解説する。

 本州では樹液のえさ場を巡りアゴで敵を投げ飛ばす戦いを繰り広げるが、島は樹液の出る木が少なく、派手な戦いとは無縁の環境。一方、倒木の下で寝床を取り合うことはあり、小さなアゴは敵を押し出すのに向いているという。