現在工事中の三河港にある港大橋(ベイブリッジウェイ)。この「工事中の建設現場」を利用し、熱中症の患者が発生したという想定の救助訓練が、令和8年8月28日、愛知県豊橋市消防本部と、工事中の現場を提供した工事業者との合同で実施されました。
熱中症患者への対応がまだまだ見込まれる9月・10月を前に、特殊環境下での訓練を行うことで、救助隊・救急隊の対応力の強化が図られました。
工事業者と合同で熱中症の患者を運び出す訓練は初めてです。

訓練は2件の事案を想定してそれぞれ実施されました。
1件目は塗装工事中で仮設足場などが設置されている狭隘空間で、重症・軽症それぞれ1名の熱中症患者が出たという想定。当日事前に開催した救急救命士による工事業者への救命講習の実践編として、現場作業員が初期対応と119番通報を実施。救急隊は仮設足場から要救助者を搬出するというものです。
2件目は熱中症が原因で意識を失い、仮設足場から転落、宙吊りになった作業員を救助隊が発見し、最適な資機材をその場で判断・利用して救出するというブラインド訓練(事前に現場の様子を共有しない訓練)です。
事案1:狭隘空間や仮設足場からの救出!
現場は港大橋(ベイブリッジウェイ)。柳生川の上を通過しており、塗装工事中の現場は仮設足場が設置され、通路の幅は大人がすれ違うのが困難なほど。約3m上の道路からは仮設階段が設置されています。

仮設足場は狭く、大人がすれ違うのが困難

要救助者を搬送する仮設足場。足場の上の道路上に救急車が待機している
この現場での事案の想定は、現場作業中に従業員2名が体調不良を訴えたことから始まります。他の作業員は事前に行った救命講習の実践編として、119番通報し救急要請を行うとともに、現場での初期対応を行いました。軽症者に対しては、衣服をゆるめ、経口補水液を摂取させたり、首元など大きな血管が集まる部位に保冷剤をあてて体を冷やす等の対応を行いました。重症者に対しては、軽症者と同様の対応に加えて、簡易アイスバスを利用して身体の冷却を行いました。
救急隊が到着した際には、傷病者の状況やそれまでの初期対応などの情報共有を行い、救急隊に引き継ぎました。

アイスバスを使用し、鼠径部を保冷剤で冷やすとともに、扇子であおいで風を送る
実際の出動事案では、要救助者の苦痛をできるだけ和らげ、安全に、迅速に運び出すことができる最適な資器材を現場の状況に合わせて選定する必要があります。今回は現場作業中の仮設足場という特殊な空間であることから、救急隊は、通常の担架が利用できないため、大きなシーツのような布製の担架を利用して要救助者を運び出しました。
事案2:仮設足場からの転落、宙吊りになった意識不明者を救え!
こちらの事案は、工事作業中の従業員1名が熱中症で意識を失い、橋脚下に設置した仮設足場から転落し、宙づりの状態になっているというもの。救助隊には事前に現場の状況を知らせない「ブラインド訓練」として実施されました。
海上に組み上げられた足場の想定で、地上からの救助ができないため、約12mの高さからクレーンのフックを支点にして、人力で吊り上げての救助となりました。

現場は海上の想定

クレーンを支点に、要救助者を吊り上げる
参加した関係者からのコメント
工事事業者
今回の訓練は、現場作業員を熱中症から守りたい、消防に建設現場を提供することで社会貢献をしたいという思いから、工事事業者の働きかけにより実現しました。担当者は、「要救助者を搬出する際、人の命を助けるという気持ちを強く感じました。我々も現場での熱中症対策を実施しているが、一番良いのは作業員間の風通しがいいことだと思っています。体調が悪いときに周囲に伝えられるような風通しの良い職場にしていきたいです」とコメントしました。

緊急連絡体制を確認する作業員
豊橋市消防本部南消防署長・消防担当者
南消防署長は「緊密な連携のもと、万全の初期対応と確実な救助の一連の流れを確認することができ、いずれの訓練もうまくいったと思います。今後はこの訓練を経験として、災害対応に努めてまいります」とコメントしました。また、消防担当者は「足場がある、入り口が狭い、ストレッチャーが入れない等、特殊な環境下で訓練が行えたことは大変貴重です。場所を提供していただけたことは大変ありがたく感じています。作業員の方への救命講習も実施させていただき、初期対応の大切さを伝えられたと思います」とコメントしました。

訓練の振り返りを行う隊員たち
9月・10月も熱中症に注意を!
豊橋市消防本部管内では、令和6年9月に47件(令和6年度は385件)、令和7年9月に35件(令和7年度は347件)の熱中症が原因での救急事案が発生しています。件数は少なくなりますが、10月にも救急事案が発生しています。
豊橋市消防本部担当者は「正しい熱中症の知識を持ち、事前の備えや早めの対策を実施してほしいと思っています」と呼びかけました。

保冷材で首元を冷やす様子

救命講習の様子
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