非協力行動の評価に直接経験が強く反映されることを実験で確認
立正大学(東京都品川区、学長:北村行伸) 経営学部の山本仁志教授らの研究チームは、人々が他者の行動を評価するとき、その行動の相手についての「世間の評判」と、その相手との「自分自身の経験」が食い違った場合、人々の判断がどのように変化するかを実験的に検討しました。研究成果は、2026年9月14日に国際学術誌 Evolution and Human Behavior に掲載されました。
人間社会では、相手についての評判を手がかりに、協力するかどうかを判断することがあります。こうした評判を介して協力が成り立つ仕組みは「間接互恵」と呼ばれます。本研究では、こうした評判情報に自分自身の直接経験が加わったとき、人々の判断がどのように変化するのかを調べました。日本の参加者を対象に、飲食店の同僚と近隣住民という2種類のシナリオ実験を行いました。参加者には、ある人物が別の人物からの依頼に「協力する」または「協力しない」場面を提示しました。そのうえで、依頼した人物の世間での評判と、その人物が過去に参加者自身に協力したか、協力しなかったかを変化させ、行動した人物への評価を調べました。
分析の結果、誰かが他者への協力を拒否した場合、その行動への評価は、協力を拒否された相手との自分自身の経験によって変化することがわかりました。たとえば、世間では評判の悪い人物であっても、その人物が以前自分を助けてくれていた場合、その人物への非協力はより否定的に評価されました。反対に、評判の良い人物でも、以前自分には協力してくれなかった場合、その人物への非協力はより肯定的に評価されました。つまり、評判と自分自身の経験が食い違う場面では、非協力行動の評価に自分自身の経験が強く反映されていました。
一方、協力する行動は、相手の評判や参加者自身の経験にかかわらず、おおむね肯定的に評価されました。このことから、人々は協力と非協力を同じようには判断しておらず、特に非協力を評価するときに「その相手が自分にどう振る舞ったか」を重視することが示されました。
さらに、相手の評判が悪く、かつその相手が自分にも過去に協力してくれなかったという、非協力に十分な理由があるように見える場合でも、その非協力は積極的には高く評価されず、中立的な評価にとどまりました。これは、非協力する理由がある場合でも、人々がその行動を積極的に「良い行動」とみなすとは限らないことを示しています。
これまで、評判をもとに協力相手を選ぶ「間接互恵」の研究では、社会で共有される評判情報が主に扱われてきました。しかし実際の人間関係では、「周囲では評判がよいが、自分には冷たかった」「評判は悪いが、自分は助けてもらった」といった食い違いも起こります。本研究は、こうしたときに人々が世間の評判と自分自身の経験をどのように組み合わせて他者を評価するのかを明らかにしたものです。
【 山本仁志教授のコメント】
私たちは日常生活の中で、周囲から得た評判だけでなく、自分自身の経験など、さまざまな情報を組み合わせて他者を判断しています。今回の研究は、そうした情報が必ずしも一致しないときに、人々がどのように判断するのかを理解する一つの手がかりになりました。今後は、オンライン上の評価やAIを介した判断のように、直接的な経験が限られる環境で、人々が評判情報をどのように利用するのかについても研究を広げていきたいと考えています。
【 論文情報】
掲載誌: Evolution and Human Behavior
論文タイトル:Direct experience overrides reputation in evaluations of defection in indirect reciprocity.
著者名: Hitoshi Yamamoto., Takahisa Suzuki., Isamu Okada.
掲載日: 2026/9/14
DOI: 10.1016/j.evolhumbehav.2026.106980
URL : https://doi.org/10.1016/j.evolhumbehav.2026.106980









