高齢者対象の新型コロナウイルスワクチンの定期接種=2024年10月、東京都板橋区
この世に感染症がなければ、どんなに生きやすいだろう=筆者提供
藤岡みなみ

 インフルエンザワクチンを接種した翌日、タイミング悪く陽性と判明した。この秋最大のトホホである。

 思えば今年も体調を崩してばかりいる。子どもたちが保育園や小学校から次々に感染症をもらってきて、いくら対策しても避けきれないと感じる。1歳児がRSウイルスに感染した時は同居の70代義母にもうつり、入院する事態にまでなってしまった。

 胃腸炎も手足口病も、家庭内感染が起こらないかハラハラしながら過ごした。一方、私がノロウイルスに苦しんだのは、一人で食べた牡蠣(かき)のせいだからまあ情けない。

 それにしても、幼児から高齢者まで多世代が一緒に生活するのは健康上のリスクが高いといつも思う。だから毎シーズンの予防接種は欠かさず受けていて、先日も累計8回目の新型コロナワクチンを打った。家族6人全員がインフルエンザとコロナのワクチンを打つと、合計12万円ほどになる。ぐぬぬ…。

 これが毎年のことだからたまらない。子どもは1種類につき期間を空けて2〜3回接種することで完成するワクチンもあり、スケジューリングにも気をつかう。全員が受け終わると達成感があり、わが家の秋の風物詩になりつつある。

 ある製薬会社が、以前流したテレビCMで、人は一生で計約5年間風邪をひいているとの試算データを出していた。成人は平均して年に3回風邪をひき、治るまでに1週間かかるとして、これを平均寿命で換算すると、その期間は約5年にも及ぶのだそうだ。他の病気もある中で、風邪だけでこんなに時間を費やしていると考えるとかなり煩わしい。

 私がインフルエンザ陽性になった日は、もともと友人3人とランチの約束をしていたのに行けなくなった。こんなふうに今年はあまたの楽しい約束をほごにしてきた。「ごめんね、レストランに人数変更の電話をしておくよ…」とメッセージを送ると、友人たちは「別日にずらそう!」と言ってくれた。

 しかし実はその後すぐ、私以外の3人も自身や家族のインフルエンザ陽性が判明したという。皆が9月のシルバーウイークを療養や看病で過ごしたのだった。私もずっと熱が出ていたので「シルバーフィーバーウイーク」と名付けることにする。

 2週間後、再設定したランチの日を無事に迎えられた時の喜びはひとしおだった。4人全員が、自分も家族も体調がいいタイミングで集合できたということが、かけがえのない奇跡のように思えた。

 しかも、その日は晴れていた。9月の東京は毎日のように雨が降っていたというのに。ウイルスが人のつながりを断ち切るかのような社会で、何事もなく集えることの幸せよ。風邪をひいてない、なんでもない日に乾杯!(藤岡みなみ、第3週水曜に更新)

 ☆ふじおか・みなみ 文筆家・ラジオパーソナリティー。1988年生まれ。兵庫県出身。上智大卒。パンダ、縄文時代、タイムトラベルSFなど関心分野は幅広い。著書『ふやすミニマリスト』『パンダのうんこはいい匂い』など。ドキュメンタリー映画のプロデュースも。