茅葺き民家の維持に努める大下勝久さん(左)と杉山信義さん=13日、飛騨市神岡町森茂
茅葺き屋根で進む葺き替え作業=13日、飛騨市神岡町森茂

 標高千メートルほどにある岐阜県飛騨市神岡町森茂の茅葺(かやぶ)き民家で69年ぶりとなる大規模な茅の葺き替えが行われている。築132年という家屋の四面ある屋根の一面に葺かれた茅を替える作業で、家主が自ら茅場で刈り取ったススキも加えて茅葺き職人とともに手仕事で励む。家主は葺き替えた屋根を見上げて「故郷の山之村地区にふさわしい家にすることができた」と語る。

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 茅葺き民家の家主は大下勝久さん(72)。長く入母屋合掌造りで暮らし、営林署に勤めて山仕事などをしてきた。茅葺き屋根は父親が1952年に葺き替えをし、40年ぐらい前からは大下さんが傷んだ部分を取り除いて新しいススキに替える「さしがや」と呼ばれる手法で屋根を補修。まきストーブから出る煙を煙突で屋根裏に導き、茅葺きをすすで覆うようにして強度を高め、家の維持に努めている。

 補修に使うススキは、家の近くの山際に整えた1500平方メートルほどの茅場で、11月ごろに水分が少なくなったススキを鎌で刈り取って用意する。雪が降るまでの短期間に行わなければならず、刈り取りやすいように雑草や石などを取り除くといった茅場の普段の手入れが欠かせない。補修で屋根から抜き取ったススキは畑の肥料になるという。

 茅葺きがやせてきて屋根の傷みも見られたことから一面の全面的な葺き替えを行うことにし、茅葺き職人の杉山信義さん(47)=中津川市付知町=に依頼。静岡県産のススキも取り寄せ、知人の職人の手伝いも受けながら1カ月ほどをかけて葺き替えをしている。

 杉山さんによると、大下家は屋根の棟部分で交差する丸太に縄で締めてつながれた別の丸太が軒まで伸びる独特の工法で造られているという。屋根の下地には麻の皮をはいだ茎が使われ、茅葺きの厚さは50センチ程度。建築に金具は使われておらず、屋根裏の部材にはちょうなで削った跡が見える。

 作業は葺き替えたススキを雁木(がんぎ)という表面が階段状をした道具で屋根の表に出る茎の先を押し込むようにしてならし、刈りそろえて整える。作業はあと数日で終える見込みで、葺き替えられた屋根は黄金色に輝いている。

 大下さんは「受け継いだ家を大切にしたい。自分でできることは自分でやって暮らしていく」と話し、杉山さんは「暮らしの文化を伝え続ける家であり、大下さんは持続可能な生活を体現している」と言う。