国内最大規模といわれた岐阜市椿洞の産業廃棄物の不法投棄事件は2004年の発覚から17年。暮らしの環境を守るため、廃棄物の撤去や河川、大気のモニタリング調査に関わってきた地元の住民組織が今年春、解散した。産廃の撤去が完了した13年以降、調査で一度も異常がなく、「周辺環境は安心できる状態まで戻った」と判断したため。中心的な存在であり続けた増田実さん(86)=岐阜市粟野台=は「事件が本当の意味で終結した。健康被害が一人も出なくて良かった」としており、子どもたちに環境保全への意識を高めてもらおうと活動を始めている。
かんたん検索! 岐阜県・東海のイベント お出かけ情報総合サイト「ぎふっと!」事件は04年、県警の強制捜査で明るみに出た。産廃処理業者「善商」が1986年ごろから、廃プラスチック類などの産廃を不法投棄して谷を埋め尽くした。ごみの山は高さ最大約50メートルに達し、土砂などを含めれば規模は124万立方メートル。国内最大規模だった。
◆廃棄物から発火、川に泡、ごみ山から白煙
増田さんは2003年、現場近くの住宅団地に市中心部から移住した。自治会長に就任して新生活に夢を膨らませていた矢先に事件が発覚し、「驚きと失望で落胆した」と振り返る。
廃棄物内では自然発火とみられる燃焼が続き、当時は高濃度のダイオキシン類も検出された。現場の排水溝から脇の原川へ流れる水には大量の泡が混じる時もあり、07年にはごみ山から白煙が発生した。
原川は下流で鳥羽川に合流し、その約500メートル下流には当時、周辺住民の飲み水をくみ取る岩野田水源地があった。「住民に健康被害が起きないか心配」と自治会が負担金を募って活動資金とし、解決に向け環境省や大学教授、国会議員らに働き掛けた。シンポジウムや講演会も開催し、住民に状況を説明する機会をつくった。
◆事件ひと区切りも「風化させぬ」
08年には、地元住民でつくる「現場対策推進協議会」を発足。会長となり、産廃の撤去を始めた市に対して住民側の要望を伝えた。撤去が終わった13年には「環境推進協議会」が立ち上がり、増田さんは引き続き会長に就任。市からモニタリング調査の結果報告を年2回受ける窓口を担った。長年、環境基準を超える数値が出なかったことから、増田さんが昨年末に「もう異常はないだろう」と解散を提案し、他の委員も賛同。不法投棄を受けて結成した地元住民の組織のうち、活動を継続していた唯一の団体が解散したことで、事件はひと区切りとなった。
市は、事件の内容を紹介する小学生向けの社会科副読本を作成し、配布している。増田さんも事件を語り継ぐ活動をしており、今月は子どもたちに環境保全への意識を高めてもらおうと、地元の岩野田北小の児童と事件現場を見学し、原川の水質を調査。異常がないことを確認し、その尊さを説いた。「事件を繰り返さないために、時代が移り変わっても風化させてはいけない」と語る。








