林優吾君の新聞を活用した作品
夏の実践作品を鑑賞する生徒たち=山県市高富、高富中学校

 2学期始業式、山県市立高富中学校の生徒らは、夏の課題を手に登校した。久しぶりに会う仲間と声を掛け合い、笑顔で挨拶を交わす姿からは、充実した夏休みの様子がうかがえた。課題は夏の実践として展示され、鑑賞会が催された。その中に、新聞部を中心に新聞を活用した幾つもの作品があった。

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 1年生の林優吾君は、地震編として1学期から記事を集め、「ここから何を学ぶか」という、力強いタイトルを掲げ、地震の被害から原因を探り、どうしたら被害が軽減できるのかを考えた。夏休みは、自分の住む山県市の断層を調べ、大切な家族の命を守るために、過去から得られる教訓を生かして、減災の対策をしなければならないと結んでいる。

 関口春琉(はる)君は、新聞に興味があり、みんなに知ってもらいたいと思い、「繰り返さない~いじめはどこでも起きる~」と題し、「普段からコミュニケーションをとり、相談できる存在が必要で大切である」「自分自身が仲間の支えになりたい」と、作品の中で伝えている。

 栗本さくらさんは、以前から関心のあった「世界で続くテロの恐怖」をテーマにした。記事を集めて読むと具体的なことが分かり、テロで息子を失った母親が、本を出版し、命の尊さを訴える強さに感動したと語っている。

 平野歩夢君は「減らせ、なくせ、交通事故」と題し、今年起きた事故の記事から、ながら運転、高齢ドライバー、交差点の危険を取り上げ、事故のない社会にしたいと願っている。

 新聞部として活動している3年生の恩田悠宇(ゆう)君と長場健生君は、新聞記事から、さまざまな分野で活躍する人や、いろんな思いを乗り越えて強く生きる人の思いを知り、「君たちはどう生きるか」と題してまとめた。記事を読むことで、分野は違っても、夢や目的を達成させるために努力している人が多いことを実感した。

 特に、全盲のヨットマン岩本光弘さんの、障害者だからと諦めないという強い生き方から、「僕たちも諦めなければ、夢をかなえることができると信じることができた」と、その生き方を通して学んでいる。そして、この強い信念をもっていたから夢をかなえることができたことを、今の自分たちとつなげて考えた。恩田君は、受験生として諦めなければ夢はかなうと信じて、日々努力していくと決意を固めた。長場君は「夢をもつことはすてきなこと。夢をもつことで、自分が生きる上での目標ができる。だから僕は、これからたくさんの体験をして、自分の夢を探していきたい」と、将来に対する期待を膨らませている。

 これら生徒の作品は、さまざまな方向から、これからに対する思いを力強い言葉で発信している。この頼もしい姿は、記事の事実を、自分事として捉えたこと、自分でその学びを深めたことが根拠にあり、社会に対する訴えでもある。中学生の夏、生徒が学校の学びを土台に新聞を広げたことで、世の中に対する素直な考えを膨らませた。そして今、その実現に向けて仲間と共にたくましく学んでいる。