調査を行った岐阜公園=岐阜市大宮町

 10日に投開票日を迎える参院選。候補者らによる舌戦は熱を増す一方、有権者の反応は薄く、投票率は前回の48.8%を下回るのではと懸念されている。投票に行かない人のほうが多数を占めそうだ。岐阜新聞社デジタル報道部は、選挙に行かない理由を探ろうと、投開票日1週間前で選挙活動に盛り上がりを見せるラストサンデーの今月3日に調査を決行。岐阜県内の公園や駅前で声をかけて話を聞いた。理由を聞くうち、投票率向上は難しいのではないかと思うようになった。

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あいにくの雨の中だが調査を決行=各務原市川島笠田町、オアシスパーク

 雨の中3人で手分けして調査

 私(45歳、男性)を含めた3人は岐阜市の岐阜公園、JR岐阜駅前、各務原市のオアシスパークに分かれて調査。午前9時~正午に時間を区切り、手当たり次第に話を聞かせてもらった。ただこの日はあいにくの雨。好天なら日曜日のためいずれも多くの人出が期待できる場所なのに、どこも思ったほどの人出はない。時折雷も鳴り豪雨が襲いかかる中、びしょぬれになりながらの調査となった。

  戦国武将・織田信長が居城とした岐阜城を頂く金華山の麓、岐阜公園は、同僚の30代のK記者が担当。観光地ということもあり、園内のロープウエー乗り場に向かうと、近くの温泉旅館のチェックアウト時間が過ぎた午前10時ごろから人が集まりだした。ロープウエーを待つ人たちに声をかけ、46人が回答。そのうち行かないと答えた人は5人。大阪府の女性会社員(52)は「投票日が旅行と重なっている。期日前投票にも行けなさそう」と話してくれた。すでに予定が入っているパターンで、ありそうな理由。また東京都の男子大学生は「住民票を移していないから投票に行かない」と話す。これも以前からよく聞く理由だ。

ロープウエー乗り場で話を聞かせてもらった=岐阜市大宮町、岐阜公園

 岐阜市の玄関口のJR岐阜駅周辺で聞き込みをしたのは、同僚の20代のI記者。交通機関の遅延を心配してか、足早に通り過ぎる人が多く、調査は難航。なんとか23人から声を聞けた。行かないと答えたのは5人。子ども2人を連れていた岐阜市の会社経営の男性(37)は、信念を持って行かないと即答した。「近所では感染対策の名目で子どもの遊び場が閉鎖されている。高齢者が割引制度で悠々と旅行に出ている間、この子たちは給食で黙食を強いられている。まさに『シルバー民主主義』だ」と吐き捨て、「若い世代に有利な制度になるまで、選挙は信頼できない」と言葉に力を込めた。選挙制度そのものへの不信感がひしひしと伝わってくる。2歳の子どもを持つ男性会社員(40)は「行くか分からない」と回答。「最近は子どもに優しい日本になってほしいという思いが強くなってきた。小児医療や子どもの学習面をサポートしてくれる候補がいるなら投票に行きたい」と候補者次第の姿勢だった。

足早に立ち去る人が多かったJR岐阜駅前=岐阜市橋本町


 水族館やバーベキュー場がある複合レジャー施設のオアシスパークでは、私が声をかけた。オープンが9時半のため、他の2カ所より30分遅れてスタート。家族連れが多いこともあり、子供が雨にぬれないようにと足を止めてくれる人は少ない。それでも36人が答えてくれ、8人が行かないと答えた。1人で来ていた各務原市の40代の女性に行かない理由を聞くと、それまで普通に接してくれていたのに困った表情になって「興味ないから」とだけ答えて逃げるように去って行ってしまった。またカップルで訪れていた愛知県一宮市の男性(40)は「ずぼらだから」と笑いながら即答。「ニュースとか見て選挙をやっているのは見るけど、積極的な気持ちにはならないな」と率直に気持ちを語ってくれた。

 行くと答えていても8割は投票先決めず

 今回の調査。計106人から話を聞いて、行かないと答えた人は18人。分からないが1人。分からないと答えた人が行かなかったとしても、投票率は82.1%に上る。母数が少ないとはいえ、前回の投票率からしてもこの数字は高すぎる。実は岐阜公園での調査では行くと答えている人でも投票先を決めていない人が8割を占めた。こうした人たちが行くと答えていながらも、実際には行かない場合がかなりあるのではないだろうか。まさに「興味がない」といった理由。選挙は本来なら行ったほうがいいと内心思っているだけに、正当な理由ではないからそれ以上聞かれたくない。それならとりあえず行くと答えてしまっているケースも多くありそうだ。

 今回、回答してくれた人それぞれの本当の気持ちはもちろん分からない。でももし記者の想像通り「興味がない」といった理由で選挙に行かない人が多いのであれば、投票率向上に向けての対策を打つのはかなり困難だなと思う。はっきりした理由があれば解決策もあるが、興味を持ってもらうための明確な解決策となると確実に効果がある方法なんて思いつかない。

投票で民主主義を守ろう

 この原稿を書き上げた後の8日、奈良市で参院選の応援演説中に安倍晋三元首相が銃で撃たれ、亡くなる事件が発生した。民主主義の根幹である選挙活動中に暴力で言論を押さえ込もうとする今回の事件は、絶対に許されない。政治に不満があるのなら、選挙で投票して変えるのが民主主義だ。私はもちろん投票に行く。それが暴力に対して民主主義を守ることになるからだ。今回の事件を受けても、政治に興味を持たない人はいるかもしれない。でも興味がなくても投票に行ってもらいたい。民主主義を守る意思を投票率で示してほしい。

取材班代表・鈴木隆宏(すずき・たかひろ) 出版社、経済専門紙を経て2011年に岐阜新聞社入社。経済担当記者をメーンに、本社遊軍や可児支局、西濃支社にも勤務。6月からデジタル報道部。3歳の一人娘に日々翻弄(ほんろう)される45歳。