300年の歴史を誇る「揖斐まつり」、やまを舞台に演じられる子ども歌舞伎が見もの=揖斐郡揖斐川町三輪
日本遺産にも登録された谷汲山華厳寺。参道には店が並び、観光客でにぎわいを見せる=揖斐郡揖斐川町谷汲徳積
秋冬番茶の収穫期に入り、茶畑を巡る摘採機=揖斐郡揖斐川町上南方
NPO法人「にわてつ」によるイベントで行われた「モ755」の走行体験=揖斐川町谷汲徳積、旧名鉄谷汲駅

 岐阜県の西端に位置し、広大な森林と木曽三川の一つ揖斐川に育まれた揖斐郡揖斐川町。自然豊かな町の市街地にある三輪神社(揖斐川町三輪)一帯で今年5月、300年の歴史を誇る例大祭「揖斐まつり」が3年ぶりに開催された。コロナ禍で規模は縮小したものの、2日間でやま(やま)を舞台に地域の小中学生による子ども歌舞伎が奉納され、祭りの活気が戻った。

無料クイズで毎日脳トレ!入口はこちら

 やまは県の重要有形民俗文化財に指定されており、神社周辺の5地区がそれぞれ保有する。今年は上町の高砂やまのみ曳(ひ)き入れられたが、例年は5両による曳きそろえがあり、壮観な光景が人々を引きつける。実行委員会の松居治良会長(76)は「来年こそはやまが5両そろった祭りを開きたい」と意気込む。来年の開催に向けて子ども歌舞伎の準備が始まっており、担当する下町の子どもたちが稽古に臨む。

 祭り以外にも、揖斐川町にはたくさんの魅力がある。桂地区は、揖斐郡池田町と並ぶ県内有数のブランド茶「美濃いび茶」の産地だ。年に3回の収穫期には、一帯に広がるもえぎ色の畑を摘採機が行き交う。

 農事組合法人「桂茶生産組合」(同町上南方)では、約30軒の農家が約50ヘクタールの畑で茶を栽培する。10月は秋冬番茶の収穫期に当たり、組合の工場に持ち込まれた茶葉は荒茶へと加工される。生産量は年間計160トン。組合は農業生産工程管理(GAP)の「JGAP」や「ASIAGAP」認証を取得、海外輸出にも対応するなど品質向上に磨きをかけている。

 桂地区には、茶業に携わる女性らが運営する専門店「いび茶の里」(同町桂)があり、製品の販売とともに「お茶カフェ」が若者の人気を集めている。

 ほうじ茶あんみつや抹茶ラテのほか、いび茶を使った数種類のお茶が並ぶ。お茶に触れる機会にしてもらおうと、急須と一緒に提供したり、店員が説明をしたりして魅力を発信する。太田由紀子社長(53)は「飲んで『おいしい』と思ってもらうことで、お茶に親しむ人口を増やしたい」と話す。

 町の市街地から車で10分ほどの谷汲地区には、7府県33霊場を巡る日本最古の巡礼路「西国三十三所」結びの地、谷汲山華厳寺(同町谷汲徳積)がある。2019年には日本遺産に認定された。参道には飲食や物販など約50店が並び、この年は約60万人が訪れた。

 コロナ禍で落ち込んだ地域の盛り上げに一役買っているのが、NPO法人の「にわてつ」だ。地元の観光協会の一員として20~50代の15人が、イベントなどを通して奮闘している。

 昨年から今年にかけて、地元の旅館組合との共同企画で揖斐郡大野町と谷汲を結ぶ無料バスを運行したほか、1月には華厳寺参道を舞台に謎解きイベントを開催。旧名鉄谷汲駅では「赤い電車まつり2022」を開き、駅に保存されている車両の体験乗車で鉄道ファンを呼び込んだ。

 代表の松田勝義さん(58)は「民間ならではの柔軟さで各所と連携しながら地域を盛り上げたい」と話し、学生による団体の立ち上げを目指している。

 揖斐川町は2005年に周辺5村と合併し、現在の町になった。合併からさかのぼること約20年前、揖斐川上流部には村があった。旧徳山村だ。徳山ダム(同町開田)の建設地となり、1987年に旧藤橋村に廃置分合された後、2006年に試験たん水が開始され、集落はダム湖となった。

 現在は、湖畔に立つ望郷施設「徳山会館」の一角にある展示コーナーが徳山村を伝承する。ダムに沈んだ旧徳山村を撮り続けた増山たづ子さん(1917~2006年)の写真を通して当時の住民の暮らしを紹介するほか、中学まで徳山村で暮らした中村治彦館長(61)が「地元の目線で伝えたい」と語り部を務める。

 ダム湖周辺は紅葉スポットとして知られ、見頃の季節は写真愛好家らでにぎわう。今年は廃村から35年、景色と合わせて村民の営みに思いをはせたい。