災害救助や空撮など、活用の場がとどまるところを知らない小型無人機ドローン。最小クラスの機体「マイクロドローン」で速さを競う全国規模のレース「JAPAN TINY DRONE CHAMPIONS LEAGUE 2021」が12日、岐阜県郡上市美並町で開かれた。全国の舞台に初めて挑んだのは、小学6年生でプロ選手の松井暁音(あきと)君(12)=同県各務原市=。競技歴は約半年と日が浅いものの、県勢1位の奮闘を見せた。幅広い世代の選手と渡り合う姿から、年代や練習場所にとらわれない新しい時代のスポーツが見えてきた。
かんたん検索! 岐阜県・東海のイベント お出かけ情報総合サイト「ぎふっと!」ドローンスクールなどを運営する株式会社「ROBOZ(ロボッツ)」(恵那市)の練習場「156 DRONE STATION」。近くの果樹園で開かれる全国大会を1週間後に控えた5日、自作のドローンのモーターを取り換えながら「当日は何とかゴールしたい」と緊張気味に語る松井君の姿があった。
松井君は同社に所属するプロ選手の一人。ロボッツが実施するドローンスクールなどの手伝いをする代わりに、機体や練習場所の提供を受けている。練習を重ね、どんなコースでも冷静に飛ぶ操縦技術を身に着けた。約半年前に競技を始めたばかりの松井君にとって、今大会が初めての全国の舞台だ。
大会で使うマイクロドローンは、手のひらに収まるような軽くて小さな機体。この大会は一般社団法人「日本マルチコプター協会」が主催しており、出場資格はバッテリーを含めた機体重量が35グラム以下になることだ。安全のため取り付けが義務化されている部品「プロペラガード」や、操縦に欠かせないカメラの搭載を考慮すると、重量は常にぎりぎりだという。最高時速は約80キロで、レース中でも約40キロの速さで飛行する。
マイクロドローンレースは非常に新しいスポーツだ。ロボッツによると、3、4年前に海外から広まり、世界大会も開かれている。国内でも競技人口は増えつつあるが、全国で500~600人ほどにとどまるという。
選手は自分の機体にカスタマイズを施して競技に臨む。同社で扱うだけでも数千種類のパーツがある。特に松井君が迷っていたのは、プロペラ選びだ。マイクロドローンのプロペラの羽根は1個当たり2~4枚。枚数が多いほど推進力が高まる一方、重くなることで旋回が難しくなるという。その繊細さは、屋内のコースに窓から風が吹き込むだけで、熟練のレーサーでも満足に操作ができなくなるほどだ。
迎えた大会は、全国的に珍しい屋外のレース。年間12会場で開かれる競技会の一つで、全国に配信されるほか、優勝者には賞金も出る。今回は県内外の10~50代の21人が出場し、3人が同時にスタートするトーナメント方式だった。自然の地形や木を利用した高低差のあるコースは斬新で、選手が事前に写真を撮りながら攻め方を話し合っていた。
1回戦を突破した松井君は準決勝に出場。縫うように通過する雲梯(うんてい)のような障害物「グラビティ」を最大の難所と捉えて臨んだ。風にあおられたり、電波がつながらなくなったりする選手が続出する中、目立ったミスなくレースを運び、素早い切り返しを生かしてゴールした。決勝進出はならなかったものの、4位決定戦に出場。5位入賞した。
試合を終えた松井君は「意外とうまくできた」と笑顔を見せた。「ドローンは災害現場などでもっと活躍するようになると思う。自分がプレーすることで、さらにたくさんの人にドローンに関心を持ってほしい」と語った。
マイクロドローンレースは、10代前半の優秀な選手の層が厚いことも特徴だ。現行の法規制では、200グラム以下のドローンは航空法の対象外となっている。レースに出場するための準備は、主にゴーグルに映像を転送して操作するためにアマチュア無線の4級以上を取得することと、無線局の開設を申請することの2種類だ。試験は小学生でも十分合格できる難易度。若手選手が生まれやすい背景には、こうした手軽さがあるという。
今回決勝に進んだ3人は、全員が中学生以下の選手だった。優勝した橋本勇希さん(14)=大阪市=は「練習量が結果に出たと思う。練習場所が少ない都会でも、マイクロドローンは家の中で何度でも飛ばせる。これからも選手は増えそう」と話した。
小中学生の初心者がめきめきと力をつけている、マイクロドローンレースの世界。数あるレースの部門の中でも、ロボッツが最も力を入れている分野だという。同社の石田宏樹社長(46)は「安全性が比較的高く手軽なことから、子供たちの上達が際立っている。競技をさらに盛り上げていきたい」と語った。













