―岐阜市出身の伊藤英明さんが、濃姫の侍従・福富平太郎貞家の役で出演しています。

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「ぎふ信長まつり」の騎馬武者行列で、集まった観客に手を振る伊藤英明さん=2022年11月6日、岐阜市金町

 伊藤さんが岐阜の出身であるということを分かった上で、オファーしました。

 戦国時代の輿入れというのは、必ずしも愛があっての結婚ではなく、いわば政略結婚でした。人質として、相手に自分の姫を与えるという側面もありました。だから冒頭のシーンで示したのですが、ものすごい軍勢が姫と一緒にいるんですね。

 ある記録によると、ある武将は1万5千人ぐらいの兵隊を輿入れに連れていったそうです。本当にその婚姻まで無事にたどり着くかどうか分からない。もしかしたら相手が嘘をついて、自分たちを欺いて攻めて来るんじゃないか。そういった緊張感が背景にあるような結婚だったわけです。

 そう考えると、濃姫と一緒に輿入れに来る武将は、剣を抜かないまでも、「剣を抜いたら多分めちゃめちゃ強いぞ」とか、「濃姫を守るためには命を懸けて敵を圧倒するのだ」といった迫力ある武将が必要だったわけです。伊藤さんが演じる貞家は、そういった迫力ある役目を果たせると考えていました。

 伊藤さんは地元愛の強い方ですし、美濃の方言もよく分かっていらっしゃる。武士の作法に関しても、非常にこだわりのある方です。ですから、伊藤さん演じる貞家がいることで、斎藤家が持つ力も伝わったし、安心する濃姫の姿も表現できました。

 セリフがたくさんある役ではないけれど、伊藤さんの存在感は、後半になればなるほどじわじわと浮き上がってきます。しかも、濃姫に仕えながら目の当たりにする信長の言動を通して、彼は信長にも惚れ込んでいく。そういった、表に出ないニュアンスを、伊藤さんは演技で上手に醸し出してくれています。映画って、伊藤さんのような俳優の存在によって、すごくふくらみが出てくるんです。

 ―映画では、これまで知られていることとは違う、新たな歴史の見方を示しているように見えます。

 例として分かりやすいのが、濃姫の姿です。

 濃姫は歴史的史料がほとんど残っていませんが、知略に優れて「マムシ」と呼ばれた斎藤道三の娘です。道三の血を継いでいますから、もし彼女が男に生まれていたら天下を取るような器だったかもしれない。また、武士の娘ということは、当時の普通の人に比べて武芸もたしなんでいたでしょうし、教養もあったでしょう。

 そういった考えをベースにして「もしかしたら、こういう女性も戦国時代にいたのでは」という、これまでとは違う女性像を濃姫で表現しました。当時は男尊女卑で、夫に妻が従うという捉え方をしがちです。しかし、僕らが映画でつくりあげた濃姫のように、新しい生き方を求めるような女性の姿も、もしかしたら当時あり得たのではと思っています。

 ―時代劇だが、現代に通じるシーンもありました。

 「龍馬伝」で大河ドラマを変えたように、「るろうに剣心」で邦画のアクションを変えたように、東映からは「新しい時代劇を作ってほしい」とオファーがありました。そして、時代劇が減っていく中で、時代劇が好きな人たけでなく、多くの人が楽しんでいただけるような映画が作れればいいと思っていました。

©2023「THE LEGEND&BUTTERFLY」製作委員会

 しかし、撮影が始まると、そういった思いだけでなく、若いころの信長の姿を意識して描くようになりました。

 自分たちが10代だった時もそうでしたが、10代は未熟であったり、愚かであったり、自分のことをよく分かっていなかったりする。信長も織田家の次の当主だと言われ、いよいよ結婚するとなった時でも、「どんな女性なんだろう」と少しワクワクドキドキしてしまう。そして、きれいな濃姫と分かると少し舞い上がっちゃう。信長も同じ人間ですから、そのような姿に時代を超えた形で共感してもらえるのではないでしょうか。

 濃姫もそうです。濃姫もよくできた娘とはいえ、女性としての自身の魅力に気づいていないのではないか。おてんばなところがあって、愛をまだ知らない。普通の10代の無邪気さや未熟さというものを作品で表現していくと、ちょっとわれわれがクスッと笑えるようなこともある。そういった姿はいつの時代の人間にもあるのではないかと、素直な気持ちで映画を撮りました。

 ―岐阜新聞の読者にメッセージを。

大友啓史監督

 映画「レジェンド・アンド・バタフライ」は、信長を主人公にした物語ですが、岐阜出身の濃姫の目線から見た新しい物語になっています。

 映画を見ていただければわかりますが、岐阜で過ごした2人の様子がたっぷり魅力的に描かれていますので、ぜひ映画を大画面でお楽しみください。