木曽川と飛騨川の合流地点に広がり、中山道が通る岐阜県美濃加茂市。川と街道の印象が強いこのまちで近年、「里山」が耳目を集める。市は本年度、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向け、優れた試みを続ける自治体を対象にした国の「SDGs未来都市」に選定された。取り組みの柱は里山の活用で、「自治体SDGsモデル事業」にも選ばれた。
スマホ見せてグルメ・買い物お得に 岐阜新聞デジタルクーポン◆「SDGs都市」高校生が課題解決、ヤギも貢献
今月上旬、山之上町にある豊田合成の企業林「樹守の里」。加茂農林高校(本郷町)森林科学科の生徒たちがスマートフォンやカメラ付き眼鏡型端末で、森林内を写真や動画に収めていた。地図データを作るための現地調査で、同行した市職員は小型無人機ドローンを飛ばして上空から撮影した。
先端技術を使い、里山を題材に持続可能な環境や社会、経済の在り方を学ぼうと、市と同学科が昨年度から始めた担い手育成事業の一環。この森で11月19日の部分月食を住民と観察することを目標に、一から整備を進める。「上空の見晴らしを良くするにはどの木を切るか」「高齢者や子どもが夜間に歩ける道をどう造るか」。生徒が一つずつ課題を解決していく。
「里山に着目したきっかけは鳥獣被害」と市の担当者は話す。かつては燃料となる木材を切り出した里山は、利用価値が無くなると竹が侵入して荒廃が進み、鳥獣被害をもたらした。市は2013年に「里山千年構想」を掲げ、翌年から荒廃竹林の伐採に乗り出す。里山の姿を取り戻し、千年たっても変わらない風景を次世代に残すため、里山の活用を進めた。今年3月時点で市が整備した里山の荒廃林は400ヘクタール超で、市の森林面積全体の約14%に当たる。
「先生、この木は何?」。樹守の里で、眼鏡型端末を装着した生徒が尋ねた。でこぼこの木肌、広葉樹アベマキだ。市内に多く自生し、堅くて割れやすいため燃料以外に利用されることはなかったが、市は学校机の天板などの製品化を進め、里山千年構想の発信に役立てる。
持続可能な社会の基盤である農業は、農地を取り巻く里山の環境に大きく左右される。地域のブランドを守る「地理的表示(GI)保護制度」にも登録されている高級干し柿「堂上蜂屋柿」をはじめ、市内では良質な農作物が生産されている。市は地場産の農産物を「里山印」としてブランド化することを検討。農薬使用量、化石燃料による二酸化炭素の排出量など認定基準の設定に動き始めた。
市内を車で走ると、公園や公共施設の緑地でヤギの群れを見掛ける。春から秋の風物詩として定着した光景だ。愛嬌(あいきょう)を振りまくヤギたちの任務は「除草」。雑草の焼却処理で排出される二酸化炭素の削減につながり、地域循環社会の象徴的な存在になった。
外国人が人口の1割近くを占める多様性を受け入れる文化的土壌や、心、体と社会の健康維持を主眼とする第6次総合計画を推進する市のまちづくり。人口が増え続ける背景には、こうした要素が生み出す居心地の良さもあるのだろう。










