自身の原点ともいえるALFA新体操クラブで子どもたちにリボンの指導をする松原梨恵さん=11月29日、岐阜市内

 新体操で五輪3大会連続出場を果たし、10月の世界選手権を最後に現役を引退した松原梨恵さん(28)=東海東京FH、県岐阜商高出=。集大成と位置付けた今夏の東京五輪では直前で一時、メンバー落ちを経験、期待されたメダルも逃した。だが、自国開催となった世界選手権では二つのメダル獲得に貢献。「最後は気持ちよく観客に向かって手を振ることができた」とやり切った表情を浮かべた。

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 引退発表から5日後の11月29日、松原さんの姿は自身の原点ともいえる岐阜市のALFA新体操クラブの練習会場にあった。リボンの指導をしたり、花束を受け取ったりして、将来の五輪を目指す若き選手たちと触れ合った。「自分に才能があると思ったことはない」。ひたむきに練習に励む選手を横目に、少しはにかんだ。選手クラスに入るためのテストでは何度も不合格になり、県大会で初めて優勝できたのは小学4年生の頃だった。「そんな人間でも頑張れば夢に近づけるということをこれからは教えていきたい」

 日本代表「フェアリー(妖精)ジャパン」入りしたのは高校1年の時。それから約12年、代表で競技漬けの日々を過ごした。チームメートと共に、年間約350日の共同生活も経験。競技レベルの向上はもちろん、「メンバーのことを本当によく知ることができて、人のことを思いやることも自然と身に付いた」。心身ともにチームに欠かせない存在へと成長していった。

 競技生活の全てを懸けて目指してきた東京五輪。その舞台に立つことすらかなわない危機が待ち構えていた。メンバー発表前に肩や首を痛め、まさかの落選。「覚悟はしていたけど、(新体操人生で)一番のどん底だった」。だが、歩みを止めることはなかった。「自分が気を抜いたらチームのレベルは下がる」。チーム最年長として悔しさを押し殺し、練習でも前向きな姿勢を示し続けた。

 そして開催直前、他の選手のけがでメンバー入り。「全うしよう」。2019年の世界選手権で44年ぶりの団体総合銀メダルを獲得するなどメダルが期待される中での演技だったが、精彩を欠いた。結果は8位。「自分たちが自分たちに期待していた分、余計に悔しかった」

 当初は今夏の東京五輪で区切りを付ける予定だったが心残りがあった。「無観客とはいえ、(演技後)気持ちよく手を振ることができなかったし、周りを見渡せなかったから」。北九州市で開かれた世界選手権は、詰め掛けた観客の前で種目別で銅メダルを二つ獲得。「五輪は綱渡りをしているような感じだったけど、世界選手権では『ミスしてもいい』と思い切りできた。みんなにも顔が違ったねと言われる」。有終の美で競技人生に幕を閉じた。

 今後はこれまでの経験を伝えたり、指導したりする中で、新体操の魅力を広めていく活動に取り組んでいく。「私もフェアリーの先輩の姿を見て、世界で戦ってみたいと思った。そういう夢を持つ子どもを増やしていきたい」。新たな挑戦がここから始まる。