選挙を勝つ上で欠かせない必須アイテム。選挙ポスターや選挙カー、「ため書き」などなど。あれ、どうやって作っているの? どういう構造になっているの? この企画では、それら必須アイテムのウラ側に迫る。

無料クイズで毎日脳トレ!入口はこちら

選挙ポスターの撮影体験に挑んだ記者=中津川市、たけかわ企画

 第1回は「選挙ポスター」。立候補者の顔や名前、公約などを有権者にアピールするためのポスターで、選挙の告示日になると街中の特設掲示板に一斉に貼り出される。候補者ごとに工夫を凝らした色とりどりのポスターがあるが、どうやって作っているのだろう。制作現場を訪ね、記者も自分の〝選挙ポスター風ポスター〟を作ってもらった。

 

■2023ぎふ統一地方選の情報はこちら

 「わざわざ掲示板を見に行く人は少なく、基本的には通りすがりで見るものですから。顔も名前も、遠くから見て目立つように。ふと見た時、印象に残るデザインがベストですね」

 こう話すのは、岐阜県中津川市のデザイン事務所「たけかわ企画」の専務、武川治宏さん(40)。長年、現職の県議や市議ら立候補者の選挙ポスターの制作を担ってきた。「こういう取材を受けるのは初めてですよ」と、苦笑いを浮かべながらも快く応じてくれた。

パソコンに取り込んだ記者の写真。顔と体の向きを多少ずらすのがプロの技=中津川市、たけかわ企画

 選挙といえば、スーツにネクタイだろう。勝手なイメージでカッチリと整えて訪問した記者だったが「ポロシャツ姿もありますよ。趣味がテニスだったりする人は」と武川さん。立候補者の特長に合わせて写真の表情やポーズ、服装やポスターのデザイン、色、文字を決めていくといい「立つか、座るか、話しているようなポーズか。年齢に応じて配色を変えることもあります」と話す。

 ポイントを押さえたところで、撮影スタジオへ。さっそく写真撮影を…と思いきや、一対一のヒアリングが始まる。

 「では今回、選挙に出馬するにあたって、その思いをお聞かせいただけますか?」。えっ!? 全くの想定外。えーっと、停滞感のある世の中ですので…。思いつくまま、若者、変化、新しい未来―。〝もっともらしいこと〟を述べていく。だが、すかさず「新しい未来って、どんな未来ですか?」とぴしゃり。

 うーん、なんというか、昔の成功体験を打ち破れず…。だけど時代はどんどん進んでいくので、いずれは変わらないといけません。若者の人口は少ないけれども、その分、若いパワーで持ち上げたい。若者が力を発揮できる社会にしたいんです! どや! 「それは、どうやって実現していくんですか? ……なんて(笑) こうやって聞いていきます」と、やっと打ち止め。武川さん、地元の青年会議所でもまれてきただけあって質問が厳しい(汗)

ヒアリングの内容を踏まえ、ポスターをデザインしていく武川治宏さん=中津川市、たけかわ企画

 「結局、そういう質問を重ねることで、その人の思いが表れてきます。やりたいことが分からないと、ポスターのキャッチコピーを書けませんから」。そう狙いを話す。記者が思いつくままに並べた〝ご託〟は「ふんわりしちゃっています。言葉は悪いかもしれないけど、当たり前のことを言っているだけ。うちに来る立候補者の皆さんは、それらをしっかりと言えるだけの熱量を持っています」とダメ出し。たかが選挙ポスター、されど選挙ポスター。「考えを持っていないと、作らなければならないものも作れません」とアドバイスする。

頑張ります!と連呼しながらフラッシュを浴びる記者=中津川市、たけかわ企画

 一通りの質問に答え、考えてもらった記者のキャッチコピーは「まちを進化させる」。その雰囲気で写真撮影へ。カメラのレンズに向かって、拳を掲げ、フラッシュを浴びながら、頑張ります!と連呼。「いいですね」。私が変えてみせます! 「どこを変えるんですか?」。このまちを、この日本を、この未来を変えてみせます!

仕上がった記者の選挙ポスター風ポスター。ダイナミックに文字を躍らせ、パッションの赤でまとめた

 そんなやり取りの末、おおよその雰囲気で組んでもらったのが、このポスター。配色は赤。満面の笑みと力強く握った拳に、「まちを進化させる」のキャッチコピーと名前がダイナミックに踊る。「新人候補と仮定して、名前を大きく目立たせました。お若いので、いきおいを出すために右肩上がりにして。ヒアリングで経済の話をされたら、元気押しではなく堅めの表情で撮ったと思います。でも『僕たちも変わっていこう』というパワーみなぎる話でした。元気を出していこうと。そういう情熱というか、パッションの赤ですね」

 さてさて、予想外に頭も体も疲れた選挙ポスターの撮影体験。テンプレートがあるわけではなく一人一人の候補者の思いを聞いて、その人に合ったポスターを作っていた。今回の統一地方選、各候補者がどんな表情、色、デザインで選挙ポスターを作ったのか。せっかくなので、街中の掲示板を眺めてみては。(瀬戸覚旨)