岐阜県では、養豚農家が豚のえさや飼育方法にこだわり、さまざまな独自の銘柄豚肉を生産している。

 おいしい銘柄豚肉があることを知ってもらい、県内に幅広く周知するための一環として、県内の養豚農家や県産ポークを取り扱う関係者などを紹介していく。

VOL.06 岐阜県養豚協会

岐阜市下奈良2-2-1 県福祉農業会館内
☎058-273-9205

養豚が少しでも地域で役立つ存在になってほしい

豚にストレスを感じさせない飼育環境を整備

 安心・安全で品質の良い健康な豚を育てるために必要なことを、県内の養豚農家で組織する岐阜県養豚協会の吉野毅会長は「豚にストレスを感じさせない環境を整え、しっかり愛情を注ぐこと」と語る。そのためには「適正な飼育密度と温度管理が必要」だと言う。こういった各養豚農家のきめ細やかな管理の下で、県産ブランド豚は飼育されている。

 生産者側が消毒を徹底して衣服や長靴をしっかりと交換することで、豚舎内に豚の健康を脅かす細菌やウイルスを持ち込まないようにするなど、衛生面にも気を配る。吉野会長が経営する豚舎では、水洗トイレのような方式で豚の糞尿を処理するなどしている。

 岐阜県の豚の安全面を、吉野会長は「全国的に見ても安全面はかなり高い。一昨年に県内で起きた豚熱(CSF)を教訓とし、ハードとソフトの両面に力を入れて管理している」と胸を張る。

 おいしい豚肉を提供するため、県内の各養豚農家がさまざまな飼育方法によりブランド豚を生産している。吉野会長は「岐阜県が開発したボーノブラウンを活用した豚肉は霜降りの割合が高い。各農家が育てる豚も与えるえさがそれぞれ違っていて、よもぎや納豆の粉末などバリエーションに富んでいる。農場にクラシック音楽を流し、豚がリラックスできるよう飼育環境を整えている農場もある」と言い、「飼育方法にこだわることで、味に違いが出てくる」と力説する。

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豚熱を乗り越えさらなる安全性の強化を図る

 一昨年に岐阜県で発生した豚熱は、県内の養豚農家に大打撃を与えた。吉野会長は「県や国からの支援、地域の人たちの理解を得て、徹底的な感染予防策を行ってきた」と振り返る。「県猟友会のみなさんには、(豚熱ウイルスを媒介する)イノシシの捕獲に尽力してもらった」と感謝する。多方面からサポートを受けてきた中で、大きな分岐点となったのが、豚へのワクチン接種。「県内の豚にワクチンを接種できるようになったことが安心の証となった。二度と豚の殺処分が起きてはいけない」と気を引き締める。

県産ブランド豚が地域の魅力となる名産品となるように

 「県内の生産者は地域密着で養豚を行っており、地域に根差した名産品を生み出そうとしている」と吉野会長は言う。昨年、吉野会長自身も白川村に同村初となる養豚場を完成させ、県産ブランド豚「結旨豚(ゆいうまぶた)」の飼育に着手。高度な免疫システムによる無薬養豚で、健康で良質な豚を育てている。「養豚が少しでも地域で役立つ存在になってほしい。地域から愛される養豚場を目指したい」と意気込む。

 昨年は、県養豚協会と岐阜女子大学が連携して豚肉料理のレシピコンクールを行った。「多数の応募があり、豚肉を愛してくれる人がこれだけいることに驚かされた。こういった場からさまざまな豚肉料理が広まってほしい」と吉野会長は願う。

 県養豚協会の今後の展望として、吉野会長は「県内の生産者がさらに衛生管理を底上げしてあらゆる疾病に対応しないといけない。飼育のノウハウの内容で日本一を目指し、後継者の育成にも力を入れながら、県内の養豚農家とともに県産ブランド豚の魅力をPRしていく」と力強く語る。