甲子園で大活躍の〝大垣日大の山田渓太〟ならぬ〝帝可児の山田隆太〟が投打で躍動―。今夏の岐阜大会初戦屈指の好カードの再現となった中濃・飛騨地区開幕戦は、帝京大可児のエースで4番の山田が大黒柱ぶりを存分に発揮し、夏に続き、益田清風を撃破した。

帝京大可児×益田清風=3回表1死二塁、右中間にランニング2点本塁打を放つ山田=KYB

◇「打点にこだわる」。4番の覚悟

 夏は3安打完封で、益田清風の3年生好右腕・桂川航輝との投げ合いを制した山田。その後、チームはベスト4まで躍進したが、甲子園出場を果たした同じ姓の山田擁する大垣日大に準決勝タイブレークで屈した。準優勝の昨夏に続き、今夏もあと少しで届かなかった甲子園。「自分が引っ張っていく」と強い意志で新チームをスタートさせた。

 地区大会初戦、いきなり打撃でみせる。一回表2死二塁、「低い打球を心がけた」と高めのボール球を中前にはじき返し、先制打。さらに三回1死二塁の第2打席、相手の内角攻めの傾向をみてとると、狙いすまして直球を右中間まっぷたつ。大垣日大・山田に負けない俊足を飛ばして、ランニング2点本塁打。「4番を打たせてもらう以上、打点にこだわる」の誓い通りに流れを引き込んだ。

帝京大可児×益田清風=8回1失点で堂々のマウンドを繰り広げた帝京大可児のエース山田=KYB

◇智弁和歌山撃破を自信に配球と切れで勝負

 マウンドではいずれも打点を挙げた直後の一回裏、三回裏の2度の3連打を含む3度の満塁のピンチを迎えながら、8回を投げ、益田清風注目の4番捕手・青木龍信の中犠飛による1失点のみに抑え込んだ。

 「最後まで投げ切ることを念頭にセーブして投球した」と直球は130キロ前半だったが「夏は外角中心に攻めた。相手も当然、対策してくるはず」とインコースをうまく使った配球もさえ、強風でバランスを崩すなど苦労しながらも変化球が切れた。田口聖記監督も「山田らしい丁寧な投球が光った」とエースをたたえた。

 チームは1日から8日まで和歌山合宿を行い、コンディション的には疲労がたまっている状態だったが、6日に行った智弁和歌山との練習試合で失策による1失点のみで、4―1で勝利したのも大きな自信になっている。「無駄なボールが多いので、次戦からストライク先行に心がける」と課題を掲げるエース。悲願の甲子園に向け「まずは地区で優勝し、1位で県大会にいく」と瞳を輝かせた。

 森嶋哲也(もりしま・てつや) 高校野球取材歴35年。昭和の終わりから平成、令和にわたって岐阜県高校野球の甲子園での日本一をテーマに、取材を続けている。