【岐阜第一7―0大垣東】
 好素材の1年生が多く、今夏の岐阜大会ベスト8の岐阜第一。新チームとなり、ベンチ入りしていなかった1年も力を付け、戦力を底上げして臨んだ秋の県大会初戦。打では立ち上がりの2点先制後、なかなか加点できず、発展途上を実感させたが、大きな収穫が、2年生左腕鑓水佑哉の覚醒。8回11奪三振完封。前チームでは秋から主力ながら今地区大会はベンチ入りしていなかったが、急成長の1年生エース水野匠登との左腕二本柱が確立。今秋のブレークを予感させた。

岐阜第一×大垣東=新チームで初の公式戦登板を8回完封と好投した鑓水=大野レインボー

◇期待の1年水野が成長 2年鑓水は配球切り替え覚醒
 鑓水が地区大会でベンチ入りしなかったのは、けがではなく、田所孝二監督の戦略。今夏、期待の1年生左腕水野を登板させることがなかったため、実戦で成長させるために地区は水野を軸に据え、鑓水を休ませることにした。狙い通りに水野は実戦を重ね、順調に成長。大会前日も大垣日大との練習試合で5回無失点だった。この戦略は鑓水にとっても大きく成長させる好結果をもたらした。

岐阜第一×大垣東=8回表岐阜第一2死満塁、鑓水が自ら中前適時打を放つ=大野レインボー

 鑓水〝確変〟の要因について田所監督は「配球」を挙げる。これまで直球と変化球を混ぜ合わせた配球だったが、直球主体で攻めることに切り替えた。球数が多いのが課題だったが、初戦では8回コールドながら98球の省エネピッチ。立ち上がりこそ、球が浮きがちで安打や四球で走者を出したが、三回からは「低めにしっかり投げられた」と鑓水。伸びのある直球で追い込み、スライダーで三振の山を築くなど、内野安打2本のほかは、八回の左前打1本のみ。「ほぼ完璧な内容だった。自信になった」と笑みを浮かべた。だが、すぐに表情を引き締め、「これからどんどん強い相手と対戦する。どんな相手でも、しっかり投げ切る。水野君に負けないよう、エースの座を取り戻す」と闘志をたぎらせる。

岐阜第一×大垣東=8回表岐阜第一、先頭の三神が左翼線二塁打を放ち、大量点の流れを呼び込む=大野レインボー

◇発展途上の打撃 選手層の底上げで選抜に挑む
 一方、打線は結果的にコールドにしたものの二回以降七回まで追加点を挙げられなかった。田所監督も「大垣東の坪(佳都)君のインコースのストレートを打ち上げてばかりだった。もっとゴロを打たないと」と苦言。ただ、選手層の底上げは大きな強み。中でも2番に定着している三神陽人はその象徴。「夏はあと少しでベンチ入りできなかった」と語るが、この日も初回に右前打で先制機をつくり、八回の先頭で左翼線二塁打を放ち、コールドを決める5点へといざなった。「これからも3、4番につなげるバッティングに徹する」と声を弾ませる。夏に続き、秋もダークホース的存在の岐阜第一。戦うたびに戦力を高め、23年ぶりの選抜へ向かって突き進む。

 森嶋哲也(もりしま・てつや) 高校野球取材歴35年。昭和の終わりから平成、令和にわたって岐阜県高校野球の甲子園での日本一をテーマに、取材を続けている。