【秋季岐阜県高校野球大会岐阜地区大会・準決勝 市岐阜商3―2長良】

 八回に続き、九回も2死満塁。一打サヨナラの絶体絶命のピンチに市岐阜商・森川柊翔の左腕がうなる。フルカウントから得意のチェンジアップで、右飛に仕留めると、ガッツポーズで仲間と勝利をかみしめた。11奪三振の189センチ右腕平塚大記と、切れとテンポの左腕森川で制した激戦。北岡剛監督も「練習試合でも地区大会でも経験しなかった接戦を二本柱で勝ち抜いたことは大きい」と2人のエースをたたえた。

市岐阜商×長良=6回11奪三振2失点と好投した市岐阜商189センチの大型右腕平塚=大野レインボー

 平塚は準々決勝の岐阜北戦で先発したが、課題の制球難で思うような投球ができなかった。「明日も先発でいく」と北岡監督に告げられ、リベンジに燃えた。立ち上がりから気持ちのこもった直球が走る。内角攻めとカットボールでゴロを打たせ、外角の直球と、決め球のスライダーで三振の山を築く。四回まで、2失点の二回をのぞき、3イニングのアウトはすべて三振。最速140キロの平塚。「130後半しか出ていなかったと思うが、質も回転もよかった」と地区大会で潜在能力を開花し始めた逸材は笑顔で快投を振り返る。

 七回からマウンドを引き継いだ森川も持ち味を発揮。テンポと決め球のチェンジアップがさえた。八回は唯一の被安打と四死球、九回は味方の失策で満塁のピンチを背負ったが、「正直いっぱい、いっぱいだだったけど、気持ちだけだった」と力を振り絞った。

市岐阜商×長良=力投する市岐阜商リリーフの森川=大野レインボー

 森川にとって決勝で対戦する県岐阜商は今春の県大会準々決勝で先発して打ち込まれた因縁の相手。「フォームも変え、調子も上がっている」とリベンジを誓う。夏ベンチ入りしながら登板できなかった平塚も並ならぬ闘志をたぎらせる。準決勝の激戦をターニグポイントに2人のエースはさらなる成長に燃える。

市岐阜商×長良=9回裏長良2死満塁、最後の打者を右飛に打ち取り、捕手福山とグラブタッチで勝利を喜び合う市岐阜商森川=大野レインボー
 森嶋哲也(もりしま・てつや) 高校野球取材歴35年。昭和の終わりから平成、令和にわたって岐阜県高校野球の甲子園での日本一をテーマに、取材を続けている。