JR多治見駅周辺の再開発で様変わりした市街地=多治見市、本社契約ヘリから撮影
熱中症対策を呼び掛けるため、JR多治見駅で家族連れにうちわを配る市公式キャラクター「うながっぱ」=8月、多治見市白山町
築145年の3軒長屋を改装し、美濃焼中心の複合施設となった「かまや多治見」=多治見市本町

 陶磁器やタイルなど、1300年以上受け継がれる美濃焼の産地として発展してきた岐阜県多治見市は、人口約10万6千人が暮らす東濃地方の中核都市。文化と産業の要所として発展し、美濃焼の魅力が国内外から人を引きつけ、“陶都”に新陳代謝を生み出している。

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 「暮らしやすいまち」として特に名古屋圏で働く人々の居住地として好まれてきた。JR多治見駅では中央線と太多線が交わり、国道19号と248号、中央自動車道が縦横に走る。虎渓山永保寺(虎渓山町)、多治見修道院(緑ケ丘)など歴史ある名所も多い。

 器との出合いを求める人が多く訪れるのは、明治期から昭和期の商家や蔵が並ぶ「本町オリベストリート」(本町)。今年4月には、二つの複合施設「かまや多治見」と「THE GROUND MINO(ザ・グラウンド・ミノ)」が通りを挟むようにオープンした。いずれも古い木造家屋を改修し、複数の陶磁器店、ギャラリー、こだわりの飲食店などが入り、連日多くの観光客でにぎわっている。

 町並みを守る意識は高い。かまや多治見を手がけたのは、司電気炉製作所(平野町)の加藤貴也さん(45)。たじみDMO(市観光協会)が空き家活用のために設けた「まちづくり基金」を初めて使い、築145年の長屋の土壁や瓦を残しながら、モダンに生まれ変わらせた。

 施設に入るのは、土器を手がける陶芸作家が営むカレー店など、特色ある事業者ばかり。内装に窯の耐熱れんがを用いた茶室「かまわ庵」など、挑戦が光る。加藤さんは「コロナ禍を経て、多治見の人々は自分たちが気付いていなかった魅力に気付き始めた。そんな感覚を共有できる人が増えている」と語る。

 美濃焼が人を引きつける様子は、市設の研究・教育機関「陶磁器意匠研究所」に表れている。焼き物の基本から応用まで2年間の課程で幅広く学ぶ、全国の陶磁器主要生産地を見渡しても珍しい施設だ。過去5年間の卒業生85人のうち、多治見、土岐、瑞浪に進路を決めた人は63人。陶芸作家として活躍する人も少なくない。

 青森県八戸市出身の女性(25)は4月に入所した1年生の一人。秋田県の美術大で陶芸の面白さに心打たれ「一から十まで学ぶことができ、自分の表現も追究できる」環境を求めて門をたたいた。目指すのは「人の暮らしに寄り添う食器」。作家を目指して今日も器と向き合う。

 「多治見は土と人が近い」と女性は話す。タイルの生産量日本一を誇る多治見市笠原町には「モザイクタイルミュージアム」が、市東部には世界最大の陶磁器の祭典「国際陶磁器フェスティバル美濃」が開かれる「セラミックパークMINO」がある。市内の小学校は本格的な窯を備え、多くの児童が一度は焼き物を体験する土地柄だ。

 女性は「30代から40代の若い世代の個人作家が最前線で活躍していて、彼らの作品を手に取って見られるのは勉強になる」と語り、「コンパクトにまとまっているまちで暮らしやすい」と暮らしにも満足しているようだ。

 市はまちづくりの基本的な考え方に「ネットワーク型コンパクトシティ」を掲げ、市中心部への都市機能集約を進めてきた。JR多治見駅周辺の再開発事業では3月までに、商業業務棟「プラティ多治見」、ホテル「くれたけインプレミアム多治見駅前」、超高層マンション「ミッドライズタワー多治見」が完成。各施設をつなぐペデストリアンデッキ(歩行者用通路)も合わせ、立体的な駅施設を形成している。多治見駅前通りに当たる「多治見市本町2丁目」は、今年の県内路線価上昇率トップの4・5%を記録。さらなる地域発展への期待感が高まっている。