【県岐阜商4―0岐阜聖徳 秋季岐阜県大会準々決勝】
県岐阜商のエース森厳徳がついに覚醒した。「素材は東海ナンバーワンが、実質ナンバーワンになった」と鍛治舎巧監督が手放しでほめる快投。新チーム発足後、練習試合を含めて完投を目標にしてきた森だが、好投しても不用意な失投から痛打を浴び、失点してきた。が、準々決勝の岐阜聖徳戦は公式戦初完封。しかも11奪三振、被安打2、四球1と、ほぼ完璧な内容。東海出場を懸けた準決勝を前に、名門100周年チームを無双状態にする、これ以上ない大きな収穫を得た。
さえる高速スライダー 直球の制球も抜群
立ち上がり、先頭打者を追い込みながらスプリットが高く浮き、いきなり中前打。だが、ここからが森の進化劇場の幕が開く。次打者を捕飛、3番杉山大空を三振ゲッツーに仕留めると、六回までパーフェクト。七回に左前打、八回に四球で2走者を出したが、いずれも奪三振で切り抜けた。
三振の山を築いたのが伝家の宝刀であるカット気味の〝高速スライダー〟。「カウントを取るための横変化、さらに決め球となる縦変化を状況に応じて、自在に投げられた」と笑顔のエース。持ち味の威力あるストレートも内外角ともに絶妙に制球され、スライダーを一段と生かし、的を絞らせなかった。球速も徐々に上がり、「五回で140キロを超え、八回には143キロまでいった」と鍛治舎監督も目を細めた。
体重移動、地道な連日のシャドウが結実
覚醒の要因が鍛治舎監督のアドバイスに基づく、シャドウピッチングの徹底。「試合中、球が浮き、痛打されることがあるのは、バランスが悪いまま投げた時で、なかなか完封できない要因」と指揮官。軸となる右足にしっかりためてから、体重移動するフォームをかためることを命じた。日々の地道な研さんが結果として現れたのが、この日の県大会準々決勝だった。
初戦の3回戦岐阜戦の内容に「果たして東海で通用するのか」とネット裏で一部にあった危ぐする声を完全に吹き飛ばす119球。だが、エースに満足はみじんもない。「初回の入りと、後半に疲れ、自分の投球ができなかったのが反省材料。次からは1試合を通じてきっちり、投げ切る」とさらなる高みを目指す。
打は4得点しかできなかったが、「タイムリーを打て」とゲキを飛ばした五回にきっちり主砲加納朋季が適時二塁打を放つなど「いい感じできている。次につながる」と指揮官。次なる期待は〝素材は全国トップクラス〟の打線の覚醒だ。