65歳の元高校教師が今秋、冒険に旅立つ。翠(みす)雅司さん=岐阜県本巣市=。南米エクアドルで2年間、数学の指導に当たる。43年間、数学教師を務め、校長にもなった。教え子は数千人に上る。そんな先生がなぜエクアドル? 翠さんは言う。「自分たちの仕事は種まきが仕事。どんな芽が出て、どんなふうに育つか分からないが、縁をもらったところで種をまいていきたい」。
かんたん検索! 岐阜県・東海のイベント お出かけ情報総合サイト「ぎふっと!」翠さんは信州大学を卒業後、1980年に岐阜県の数学教師になった。高校野球にも長く携わり、各務原西高校で監督、母校の岐阜北高校では野球部の顧問を14年間務めた。大垣北高校では野球部長を6年間。口癖は「ハートだよ、ハート」。熱い先生、と生徒たちに慕われ、厳しく指導するのが当たり前だと思っていた。
翠さんを変えたのは東日本大震災と教え子たちだった。2010年に大垣市の県立情報科学芸術大学院大学(IAMAS)の事務職に異動。慣れない仕事に戸惑っていた。そんなときに東日本大震災が起きた。休みを利用して東北へボランティアに。そこで出会った人たちが「すごかった」。海外協力隊員のOBや国際協力に関わる人たちが活躍していた。さまざまなボランティアがあった。山県高校(山県市)の校長になると、生徒たちと宮城県石巻市や、九州北部豪雨で被害を受けた福岡県朝倉市にボランティアに行った。
生徒たちからも教えられた。教え子の中には自分で学校を立ち上げたり、海外や地域で活躍するようになったりした人も。筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者で、サッカーFC岐阜の元社長恩田聖敬さんも教え子だ。
悩んでいる生徒たちも多くいた。学校へ行けず苦しむ子、家庭の不安を抱える子、自分の性格や進路に悩む子らがいた。声をかけ、聞き役になり、支えた。厳しいだけの指導では心は育たない、と悟った。
教室にはいろんな生徒がいた。「多様性を大切にする社会に変わっていかないといけない。人間として個々が尊重され、だれか他人の犠牲の上に成り立つようであってはいけない」。教えることは教えられること。自分自身も社会の変革に向けて挑戦することを決めた。
2022年10月、海外協力隊員に合格。数学教師派遣の要請があったエクアドルに行くことになった。再就職先の済美高校(岐阜市)を23年3月に退職後、長野県駒ヶ根市で60日間訓練合宿した。現地で使うスペイン語などの研修を受けた。
外務省のホームページによると、エクアドルは面積が25・6万平方キロメートルで、本州と九州を合わせたほど。人口は約1776万人で、ダーウィンの進化論で有名なガラパゴス諸島はエクアドル領だ。一部地域では犯罪組織による強盗など凶悪事件が発生し、治安情勢が不安定とされている。
順調に進めば11月からエクアドルの首都キト市(標高2850メートル)の教育委員会に所属する。中学校を巡回して生徒に数学を教え、現地の教師に指導法や評価の研修を行う。「日本でしてきたように、それが次世代につながり持続可能な教育の発展、子どもたちの成長、国の発展につながれば」。10月下旬に日本を出国予定だ。













