中津川に秋の訪れを告げる栗きんとん。茶巾絞りで一つ一つ丁寧に作られていく=中津川市本町、川上屋本店

 岐阜県中津川市の秋といえば、やっぱり栗きんとん。家庭でもよく作られる郷土の味だ。和菓子店では、新鮮な栗を蒸して中身を取り出し、裏ごししたものに砂糖を混ぜて炊き上げ、一つ一つ茶巾絞りで形を整えていく。江戸時代に東京と京都を結んだ中山道の中津川宿で創業した川上屋(本町)は老舗の一つ。「栗きんとんの味を守っていく」。今年、父から社長を継いだ原潤一郎さん(44)はこう決意する。

◆栗きんとん、20店が自慢の味

 JR中津川駅前には「栗きんとん発祥の地」の石碑が立つ。中津川菓子組合によると、市内で製造するのは組合員14店舗を含め約20店舗。各店が競い合って味に磨きをかける。昔は地元での販売が中心だったが、物流の発達やブランド力の向上とともに、地元で採れた栗はもちろん、熊本、宮崎を中心に全国の栗を使って生産力を高めた。「仁太郎」(加子母)の社長で同組合長の今井啓示さん(49)は「全国に秋の訪れを届けているのがこの地域の特徴」と話す。

 新型コロナウイルスの緊急事態宣言下で迎える今秋は、積極的に集客を図るのは難しい状況。そんな中、中津川観光協会はコロナ収束後の誘客につなげるため、名古屋や関西の百貨店で栗きんとんを販売する。会長の前田雅生さん(48)は「一度食べてもらって中津川に興味を持ってほしい。また遊びに来たときに買ってもらえたら」と期待を込める。

◆東濃桧で楽器作り

 中津川市は約80%を森林が占め、伊勢神宮(三重県伊勢市)の式年遷宮に用いるヒノキも供給する。そんな東濃桧の産地で、地元の木材を使ってドラムの製作に打ち込むのが早川木材(付知町)の専務、小池英仁さん(33)。木製浴槽メーカー檜創建(坂下)に勤務していたときに身に付けた木桶(きおけ)の伝統技術を生かし、家業の製材業の傍ら、ヒノキやクリ、ケヤキでドラムを手掛ける。

 円形の胴は、細長い板を並べて作る。木桶と製材の二つの技術があるからこそできる。中津川公園(茄子川)で毎年開催される野外音楽フェスティバル「中津川ソーラーブドウカン」で展示し、出演者らの声を聞いて質を高めた。「ドラムを通じて林業と木工が盛んな地域だとPRしたい。さらに新しい産業につながるといい」

 2005年の越県合併で同市に加わった馬籠宿(馬籠、旧長野県山口村)は中山道有数の観光地。近年は妻籠宿(長野県南木曽町)との間をハイキングする訪日外国人に人気だったが、コロナ禍で状況が一変した。実家が土産物店「丸北野屋」の原俊司さん(41)は勤務先の会社を辞め、本格的に観光に携わろうとした矢先だった。

 先が見えない中でも前を向く。坂道にある宿場町とシンボルの水車をアピールするため、若手と協力し新たに2基の水車を設置。来年、地元の中央自動車道神坂パーキングエリアにスマートインターが開業するのも見据え、「馬籠の知名度を高める活動をしていきたい」と意気込む。

 JR美乃坂本駅(千旦林)の北側には将来、リニア中央新幹線の岐阜県駅(仮称)ができる。JR東海が目標に掲げてきた東京・品川-名古屋間の27年開業が困難になる中、今夏から駅予定地周辺で関連工事が始まった。開業後、市の姿はどう変わるのか。リニア駅前の広場からも望める市内最高峰の恵那山(2191メートル)は、市の歩みを見守り続けている。