「鍋とかき氷」という一風変わった取り合わせを看板に掲げるのが、岐阜市岩田東の「鍋&Dining cotocoto(ことこと)」です。店主の伊藤敦さん(51)は野菜ソムリエ協会認定資格を持ち、おいしさだけでなく、野菜や果物の力を最大限に引き出し、体の中から美しく、健やかになることを目指した創作料理を生み出しています。開業から15年余り、時代に沿った斬新なアイディアと、「健康的で栄養バランスの取れた食事を提供したい」という一貫した思いによる店づくりが、広い世代の支持を集めています。

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味とともに栄養の吸収率まで考えられた鍋料理

 メインメニューは野菜がふんだんに取れる鍋。

 定番のもつ鍋や豚キムチ鍋から、皮ごと食べられる輪切りレモンがさわやかな鶏塩レモン鍋、トマトコラーゲン入りの美肌トマト鍋など個性的なものまで多彩です。

 メニュー開発はいずれも伊藤さんが手掛けており、栄養のバランスや体への効果にまで配慮が施されています。

 「食による美と健康」という信条をより確かなものにするため、伊藤さんは開業後、野菜ソムリエ協会が認定するベジタブル&フルーツビューティーセルフアドバイザー資格を国内の男性で初めて取得しました。

 野菜をただたくさん使うのではなく、「ビタミンの吸収率まで考えています。ビタミンは加熱で流失しやすいため、スープごと飲んでもらえるようにしたり、シロップやドリンクには非加熱の野菜や果物を使ったり。食べた人の体によりしみわたるものを提供したいと思っています」

 ただ、鍋料理はどうしても冬のものというイメージがぬぐえません。そこでもう一つの柱にしたのがかき氷。こちらは季節ごとにさまざまな種類が登場します。

旬のフルーツを使った彩り豊かなかき氷

 メロンを器にして氷を盛り、丸くくり抜いたメロンを全面に飾った「メロメロタワーメロン」など、旬のフルーツを使ったかき氷は見た目にも楽しめます。

 アスパラのシロップを使った「アスパラとベーコン」、ジャガイモの冷製スープをかき氷にした「ビシソワーズ」など、野菜を主役にしたものも。

 驚きを誘うメニューを生み出す伊藤さんの発想力は、豊かな人生経験に裏打ちされています。

 出身は秋田県。東京でシステムエンジニアの仕事に就き、機械系を中心にさまざまな業種を渡り歩きました。

 台湾、韓国、ドイツなど海外出張も多く、「国内外のいろんな土地へ行って、その地の味を知れたことが、今につながっています」

 飲食業界へ足を踏み入れたのは30歳直前。「機械と向き合う仕事が多かったので、人と身近に接する仕事がしたくなりました」というのが動機です。

 名古屋市で居酒屋の共同経営をした後、2008年、35歳でcotocotoをオープンしました。

野菜や果物を主役に、おいしくて健康になれる料理を提供する伊藤敦さん=名古屋市内

 システムエンジニアと飲食業、180度違う印象ですが、「私にとって、何の仕事でもやり方は変わりません。作りたいものをイメージし、その目的に向かってアイテムをそろえ、ゴールにたどり着くための命令を与えていくというのは、機械も料理も同じです」と話します。

 岐阜市にはゆかりがなく、知人の紹介で出店地を決めました。人の集う繁華街ではありませんが、「カフェと居酒屋の融合といううちの業態は、お酒が飲めない人にも来てもらえる。ちょうどノンアルコール飲料に注目が集まっていたタイミングで、時代の需要はあると考えました」。

 健康志向の高まりや、近年のかき氷ブームも追い風となり、着実に顧客層を広げています。

 7月には、名古屋市にかき氷専門の系列店を3カ月の期間限定でオープン。こちらも開店前から行列ができる人気ぶりです。

 「常に時代に求められるものを提供していきたい」という思いで、変化する価値観に合ったメニュー開発を続ける伊藤さん。一方で、「食による健康」という信念はぶれることはありません。

 「時代は変わっても、健康は必ず求められる。この一貫性があれば、新しいものでも受け入れていただけると思っています」

(取材・文 西山歩)

鍋&Dining cotocoto
岐阜市岩田東3-186グランメール岩田1F
電話 058(241)7750
※名古屋市への期間限定出店に伴い、現在、岐阜本店の営業は金~日曜のみ。
※かき氷のメニューは随時変更されます。