ロゲイニングってご存知ですか? 今、岐阜県内各地で開かれているスポーツだそうです。難易度ごとに得点が異なるチェックポイントを巡り、制限時間内の合計点を競う競技ですが・・・正直よく分かりません。分からないので参加してみることにしました。なぜか、FC岐阜の宮田博之会長と一緒に。いろんな人の熱い思いを感じるレースとなりました。

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スタートするFC岐阜の宮田博之会長=岐阜メモリアルセンター芝生広場

◆要するに岐阜の偉い人です

 10月下旬、岐阜市であった大会にエントリーしました。主催はNPO法人岐阜aiネットワーク(大垣市)。県内各地で大会を開き、今回が12回目。私は友人と2人で参加するはずでしたが、その友人が急に来られなくなりました。経験者のその彼からは「始めてで一人だとちょっと? かなり? 不安かな?」とLINE。ええい、かまうものか、なんとかなるだろう!。

 スタート地点の岐阜メモリアルセンター芝生広場に着くと主催者から「一人ですか? よければこの方と一緒に参加しては」と声をかけられました。それが宮田会長。ええ、なぜそんなVIPが一人で来ているの!?

 念のために紹介します。宮田さんは岐阜市出身の76歳。岐阜高、早稲田大を卒業後、住友建設(現三井住友建設)に入社し、2005年に社長になりました。2015年にFC岐阜を運営する岐阜フットボールクラブの社長に就任。現在は会長です。要するに岐阜の偉い人です。

 実はこの大会、FC岐阜も共催でした。この日はホームゲームの日。試合前に動けるのが自分自身だけだったから、と宮田会長は笑います。同行を快諾していだきました。

◆特別ルールで公共交通機関OK

 会場に人が集まってきました。40人ぐらいでしょうか。んん? あの短パンの人、足がたくましい。長距離ランナーの足をしている。あの人はマラソン選手みたいにひざにテーピング。あの人たちもランニングシューズ。私は勘違いをしていたようです。気軽に岐阜市の観光名所を巡るゲームだと思っていましたが、どうも様子が違うようです。

 ロゲイニング(ロゲ)はオーストラリア発祥のスポーツ。地図やコンパスを使って、各所に設置されたチェックポイントをできるだけ多く制限時間内にまわり、得られた点数を競う野外スポーツです。厳しい練習で鍛えた肉体と瞬時に高得点ルートを導き出す頭脳を必要としたスポーツだったのです! どちらも自信ありません。

 「あ、公共交通機関を使ってもいいですよ」と主催者。大会はある目的のため、普通のロゲとは違って特別ルールが適用されていました。会場内には岐阜バスのブースがあり、1日乗車券を販売しているほど。隠された真の目的は何か。それはゴール後に明らかになりました。

特別ルールで公共交通機関を使ってもOK。岐阜バスの1日乗車券を購入=岐阜メモリアルセンター

◆ルート選択が重要

 レースが始まりました。岐阜市中心部を中心に広がった約90カ所のチェックポイントを巡ります。チェックポイントは独自開発したアプリ「岐阜ナビ」、またはスタート前に配られた紙の地図で確認します。

独自開発したアプリ「岐阜ナビ」の画面

 チェックポイントにはそれぞれ得点が付けられています。スタート地点のメモリアルセンター近くのポイントは10点、岐阜城は160点、10キロ以上離れた岐阜市南部の神社は190点。制限時間は3時間。ルート選択が重要です。

 私たちはメモリアルセンターすぐ北側の崇福寺から始めました。織田信長ゆかりのお寺で、指示通りに鐘楼をバックにスマホで写真を撮ります。アプリ内のGPSでも分かりますが、写真を撮って現地に行ったことを証明するためです。

 それにしても宮田会長、失礼ながら年齢の割にお元気です。さすがサッカークラブの会長、足取りがまったく乱れません。「毎日1万歩歩いているんだよ」。Jリーグのスポンサー企業が提供するウオーキングアプリで計測しているそう。「歩くのは得意なんだ」とのこと。納得の歩きです。

◆「町中を流れるこんなに美しい川はない」

 長良川の堤防を越え、長良橋北詰近くの「高橋尚子ゴールドメダル記念碑」へ。長良橋を渡り、岐阜公園内の板垣退助像、岐阜大仏。岐阜公園では多くの中国人観光客とすれ違いました。

 「岐阜の町をこんな風に歩いたことはない。初めて。いいですね、ゆっくり見られて」と宮田会長。長良橋を渡りながら話してくれたのは、長良川の美しさでした。「海外に住んだり訪れたりしたけど、この人口規模の町の中を、こんな美しい川が流れているのは世界中どこを探してもないですよ」。初秋の長良川はとうとうと流れ、西方へ、光の中に消えていきます。

「町中を流れるこんなに美しい川はない」と話す宮田会長=長良橋

 それにしてもチェックポイント、よくできています。岐阜城や金華山の展望デッキなど行くのに時間がかかるポイントは高得点。中にはケーキ屋やコーヒーショップも。訪れるだけでなく、買い物をすると得点になります。地域のお店を知ってもらうことも狙いの一つといいます。

 メディアコスモスなどを経由して柳ケ瀬へ。となると、あそこへ行くしかありません。そう、日ノ出町にある「FC岐阜勝ち神社」です。チェックポイントになっていました。宮田会長と一緒に手を合わせます。果たして御利益はあったのか? ありました。この日、FC岐阜はホームで2位(当時)の今治と対戦し、4―1で快勝しました!

チェックポイントになっていたFC岐阜勝ち神社。この日、FC岐阜はホームで快勝=岐阜市日ノ出町

◆制限時間に遅れたら失格

 ユニークなのはゴールに戻ってくる制限時間を厳密に守らないといけないこと。15分遅れると失格という厳しさです。

 私たちは柳ケ瀬から岐阜バスに乗ってメモリアルセンターへ急ぎました。そしてゴール。あっという間の3時間、歩数は約1万1千歩でした。計算すると私たちが獲得したポイントは348点。男性ソロの部の優勝は1900点。本格的にトレイルランをしている41歳の男性でした。

ゴールへは柳ケ瀬からバスを利用=岐阜市神田町

 宮田会長が歩いているときに何度か口にしたのは「町のにぎわい」でした。「町のにぎわいを取り戻さないといけない。ロゲで新しいスポットやお店を見つけることができる。われわれFC岐阜もにぎわいをつくる一助になれれば」。そう振り返ってくれました。

◆目的は岐阜の観光を盛り上げること

 「ロゲは岐阜の観光を盛り上げるための手段なんです」。そう話すのは主催するNPO法人岐阜aiネットワーク(大垣市)理事長の宮田明さん(66)です。

岐阜でロゲを企画している宮田明さん=岐阜市長良福光、岐阜メモリアルセンター

 鍵は独自開発のアプリ「岐阜ナビ」。GPS機能が入ったこのアプリで、外国人や視覚障害のある人向けの効率的な観光ルートの構築を目指しているといいます。

 日本語が分からない外国人や、視覚障害のある人が自由に岐阜を観光できるようにするためには情報が必要。移動ルートやかかる時間などを調べるために、アプリを入れたロゲ参加者のスマホで計測するのです。このために、通常のルールとは違い公共交通機関の使用を認めています。

 このアイデア、全国コンテストで表彰されています。オープンデータやデジタル技術を活用し、地域課題を解決するアイデアや取り組みを審査する「アーバンデータチャレンジ2022」一般部門で金賞を受賞しました。

 宮田明さんは言います。「米エミー賞を受賞したドラマ『SHOGUN 将軍』。シーズン2は関ケ原の戦いが描かれるはずで、外国人観光客が大勢岐阜を訪れると予想しています。その際は岐阜から関ケ原までの大会を開きたい」。ロゲが岐阜の観光を変えるかもしれません。(馬田泰州)