岐阜県内の高校を紹介している「ぎふ高校研究」。探究学習に力を入れる高校が増えています。生徒の成長だけでなく大学入試につながるといった狙いもあるようです。こうした取り組み、大学から見るとどうなのでしょう。探究学習に詳しい岐阜大学社会システム経営学環の高木朗義教授(61)は「絶対に必要です」と断言します。なぜですか? 「学力の定義が変わったからです」。探究学習をしていないと入学が困難な学部もあり、なんと大学での成績にも関係してくるといいます。高校、大学の教育が大きく変わってきています。(岐阜新聞デジタル独自記事です)

高木朗義教授
 たかぎ・あきよし 名古屋市出身。専門はまちづくり。県内の高校で探究学習について生徒や教師を指導。「全国高校生マイプロジェクトアワード・岐阜県サミット」運営にも関与している。飛騨市に2026年開学予定の4年制私立大学、CoIUの副学長候補。

 ―探究学習についてどう思うか。

 探究の取り組みは絶対に必要だ。社会に出て行く上で欠かせない。社会では、自分自身で問いを立て課題解決することが求められるケースがある。そのプロセスを学ぶ探究をやらない、という選択はない。

 そもそも学習指導要領が新しくなり、学力の定義が変わった。学力とは昔は「知識と技能」だった。今それに二つ追加されている。一つが「思考力や判断力、表現力など」。もう一つが「主体的に学習に取り組む態度」だ。これらを合わせて学力の3観点という。

 学びに向かう姿勢や態度が学力と定義されている。

 もちろん教科の学習も大事だが、教科学習で行われているインプットだけでは、「思考力や判断力、表現力など」「主体的に学習に取り組む態度」は身につかない。

 探究学習により、大学生も変わってきている。

 特に、私が所属する社会システム経営学環は探究学習をしてこないと入るのは非常に難しい。入試には面接や小論文があるが、小論文のテーマは例えば「地方の集落があります。あなたが村長だとしたら、集落存続のためにどうしますか。提案しなさい」といったもの。正解がないテーマにしっかり答えないといけない。探究をしっかり学んでこないと点数が取れない内容だ。

 それが受験生の多くができるようになってきた。高校生に探究が浸透してきていると思う。

◆自ら動く高校生や大学生が増えている

 ―探究は自ら問いを立て、課題解決に向けて調べて解決法を探り、それを発表するという学習手段サイクル。それができる高校生、大学生が増えているということか。

 発表するだけでなく、自ら課題解決に動く高校生や大学生が少しずつ出てきている。

 例えば岐阜高校の自然科学部、地元産キウイを使った商品開発などに取り組む関高校がある。教室の外に出て自分の興味関心に基づき、「おもしろいから」と行動している高校生や大学生が現れている。

 ―今までの詰め込み型教育と違ってきている?

 そう言っていい。

 可児高校は、普通の教科学習も探究的な学びに変えてきている。授業の冒頭に課題を提示し、生徒が自分たちで調べたり考えたりして、最後に発表する。間違っていることもあるが、その答えに至るプロセスを重視する。

 記事の後半では、探究学習がうまくいっていない高校の共通点、探究に取り組んできた生徒とそうでない生徒の違い、学力について高木教授が指摘します。

◆人口減で社会や教育が変わる

 ―学校ごとに探究の取り組みは違うのか。

 残念ながら学校によって濃淡がある。

 熱心に取り組んでいる学校はある。例えば長良高校。...