アーベル賞の授賞式を終え、笑顔で地元メディアの取材を受ける京都大の柏原正樹特任教授=20日、オスロ(共同)

 【オスロ共同】数学のノーベル賞ともいわれる「アーベル賞」を日本人で初めて受賞した柏原正樹京都大特任教授(78)が21日までに、共同通信の単独取材に応じた。数学の美しさとは「新しいことが分かった時」と述べ、好きという気持ちが研究の支えとなったと強調。数学教育を重視するノルウェーの姿勢に触れ、日本への懸念も吐露した。

 歴代受賞者は欧米出身者が目立つが、数学の世界で日本人が評価されにくいと自身が感じたことは「ない」とし、過去を振り返るように静かに語る。決定時の会見では、数学への思いを「美しい」と表現したことが話題になった。美しさを感じる瞬間について「新しいことが証明できた時」と話す。

 祝賀行事への参加を通じ、ノルウェーが数学教育を大事にしていることを「痛感」したという。日本の大学受験の仕組みや「数学を暗記科目」と捉える考え方などが、苦手意識に拍車をかけ数学者を志す人材が減るのではないかと不安視する。他方、人材を積極的に集め、論文数も増えている中国が伸びてくると予想する。