地ビールのイベントに出店した「イカ王子」こと鈴木良太さん=8日、盛岡市

 岩手県宮古市の「イカ王子」こと鈴木良太さん(43)は、三陸の海の幸を加工販売する地元のちょっとした有名人だ。東日本大震災後に国の補助金を活用して売り上げを伸ばし、復興シンボルの一人としてまちを明るくした。だが大きな借入金もあって2023年に倒産。失意の日々を過ごしていたが、宮古の魅力を発信したいとの思いは消えず、今月から再始動した。

 仙台市からUターン就職した実家の水産加工会社は震災の津波で倉庫が流され、約1億3千万円分の在庫を失った。経営を立て直すため、中小企業の設備復旧を支援する「グループ補助金」などを使って工場や倉庫を新設。主力商品のイカそうめんをPRしようと「イカ王子」を名乗り、交流サイト(SNS)での発信にも力を入れた。

 次第に注目を集めるようになり、テレビで紹介されると直後から注文が殺到した。

 だがイカは水揚げ量が年々減少して利益が出なくなった。震災前からの借入金返済などが重く、23年10月に倒産。会社は24年夏に東京の商社へ事業譲渡した。

 それでも熱意は消えなかった。