25日、オランダ・ハーグで開かれたNATO首脳会議で記者会見するトランプ米大統領(ロイター=共同)

 【ニューヨーク共同】カナダ政府は29日、米IT企業に課すデジタルサービス税(DST)を撤回すると発表した。DSTに反発するトランプ米大統領に貿易協議を打ち切られたのを受け、譲歩した。DSTは欧州でも導入が進んでおり、米政権が貿易交渉を通じて他国にも撤回を迫る可能性がある。

 デジタル課税は国境を越えて活動する巨大ITなどへの適正な課税を目指す法人税制だ。米国はアマゾン・コムやメタなど自国の巨大IT企業への影響が大きいとして以前から問題視してきた。今回のカナダの撤回により、OECDを中心に進められてきた国際的な課税ルールの策定がより難しくなるとの懸念が強まりそうだ。

 カナダのカーニー首相とトランプ氏は、貿易協議を再開することでも一致。7月21日までの合意を目指すとしている。カナダ政府は昨年導入したDSTの撤回に向けた法案を議会に提出する予定で、6月末から予定していたDSTの徴収は中止される見通しだ。

 カーニー氏は29日の声明で、米国との交渉を巡り「労働者と企業にとって最も有益な合意を目指す」とした。