少子化や大学入試改革で今、高校を取り巻く環境は大きく変化しています。岐阜県内の高校はどう対応していこうとしているのでしょうか。岐阜新聞デジタルは各校の校長らトップにインタビュー。学習方針や進路対策、キャリア教育について考えを聞きました。今回は海津市唯一の高校、海津明誠高校です。創立105年の伝統校ですが、この春の普通科入試倍率は0.19倍と衝撃的な数字でした。一方で、地域と連携した全国レベルの探究活動、少人数ならではの手厚い進路指導、全国大会常連の部活動などの特徴もあります。向田富紀子校長(52)は「地域で活躍する生徒を見てほしい」と言います。(岐阜新聞デジタル独自記事です)

―海津明誠高校の特徴は。
海津市をフィールドとして協働的な探究活動をしている。昨年度末に海津市と包括連携協定を結んだ。
昨年度の「『届けよう、服のチカラ』アワード」に参加したプロジェクトでは、回収ボックスを作って幼稚園や保育園などに子ども服の回収協力を呼びかけた。約8千枚を難民に届けることができ、全国最優秀賞に選ばれた。
「観光甲子園・地域探究部門」では準グランプリを獲得した。関係者人口を増やすために進学などで地元を離れた人が友人と古里を訪ねる「超帰省」を提案したもの。「海津しか勝たん」というタイトルで生徒たち自身が考えた。
ヨット部の使わなくなった帆をリサイクルして地元企業とバッグを作成、販売に取り組んでいる。「おちょぼさん」の愛称で親しまれる千代保稲荷神社の燃え残ったろうそくで防災用ろうそくを作る取り組みもした。
よく工夫した、と思う。生徒の6割が海津市内から通う。海津市唯一の高校なので、地域に密着し、根差した活動がしやすい。ここが本校の大きな魅力だと思う。生徒たちは自己肯定感、課題を発見する力、仲間と協働する力を養っている。失敗しても、次に進む力が育っている。社会に出て役立つ力を地域で実践的に学んでいる。
―学科ごとの特徴は。
普通科は大学、専門学校、就職まで幅広い進路希望をかなえることができる。1年生から特別進学クラスを設け、大学進学を目指す。3年生から「文系教養進学コース」など希望する進路ごとに3コースも設ける。幅広い授業を受けることができ、商業や家庭科など専門科目を学ぶこともできる。
ビジネス情報科は情報分野、会計分野の能力と、ビジネスで必要なコミュニケーション力、社会人としてのマナーを学ぶ。国家資格の情報処理技術者試験、日商簿記検定2級などの資格取得も目指す。資格取得を難関大学進学、有名企業就職につなげる生徒もいる。
生活デザイン科は食物、被服、保育、介護を学ぶ。生活産業を担う人材の育成を担う学科で実践的な学びができる。地域の現場と連携して学ぶのが特徴だ。
―進学・進路実績は。
2024年度の卒業生は進学が6割、就職が4割だった。過去5年間では岐阜大学への進学実績もあり、現在も国公立大学合格を目指している生徒がいる。指定校推薦も充実している。大学の進学先は愛知県の私大が多い。
就職は公務員が毎年一定数いる。地元の有力企業やトヨタ系列の企業などに就職する生徒もいる。昨年度の求人倍率は約22倍だった。
―今年3月実施の入試の最終倍率が1倍を下回っている。特に普通科は0.19倍だった。要因はなにか。...