全国の大学病院の経営悪化に伴い、医学研究の国際競争力低下が懸念されている。大学病院は地域の高度医療を担うだけでなく、医師の育成や研究の拠点でもあるが、500億円を超える赤字を少しでも減らそうと、診療を優先させて研究に時間が割けない状況だ。関係者からは「大学病院が担うべき役割が果たせなくなる」との声が上がり、文部科学省は2025年度補正予算で緊急的な支援を実施する。
「今年の(診療の)稼働率が過去最高で、去年より頑張っているのに赤字に転じた病院もある。いくら収入を増やしても消耗品や医薬品の値上げが上回る」。10月上旬、名古屋市内で国立大学病院長会議の大鳥精司会長(千葉大病院長)らが、全国知事会で文教・スポーツ常任委員会委員長を務める大村秀章・愛知県知事に窮状を訴えた。
全国医学部長病院長会議によると、24年度の全国81大学病院の経常損益は合計で508億円の赤字。内訳は国立大42病院が286億円、公立大8病院が91億円、私立大31病院が131億円の赤字だった。






