欲望トレンドのキーワードは「セルフカルチャー消費」
2025年12月4日
株式会社 電 通
株式会社電通(本社:東京都港区、代表取締役 社長執行役員:佐野 傑)は、株式会社電通マクロミルインサイト(本社:東京都中央区、代表取締役社長:眞鍋 尚行)との共同プロジェクトチームである「DENTSU DESIRE DESIGN(デンツウ・デザイア・デザイン)」(以下「DDD」)※1において、消費に対する欲望の増減を予測する「欲望未来指数」の最新版を取りまとめました。消費意欲活発化の兆しがうかがえる結果となった前々回(2024年12月公表)※2、前回(2025年7月公表)※3と同様に高水準で推移しており、消費意欲は引き続き高い傾向にあることが分かりました。また、来年の消費者の欲望のトレンドを予測する「欲望トレンド 2026」として、「セルフカルチャー消費」を予測しました(詳細後述)。「欲望未来指数」と「欲望トレンド 2026」の詳細は次の通りです。
〈「欲望未来指数」の概念図〉
1.「欲望未来指数」の最新版について
(1)「心が動く消費調査」と最新結果
消費者の消費に対する欲望の増減を予測する「欲望未来指数」は、2021年から実施している「心が動く消費調査」※4をもとに、物価や景気、経済状況といった外的要因ではなく、「買いたい・欲しい・やりたい・見たい」という消費者の気持ちの増減を可視化したものです。現代の消費者が持つ43種の「根源的欲求」と105種の「価値観基盤」、また「これから欲しいもの・したいこと」といった消費につながる具体的な意欲をもとに算出しています。
最新の「欲望未来指数」は250.0(前回253.9)となり、前年同月比では5.4ポイント減となりました。前回、前々回と比較して微減ではありますが、引き続き高い水準を維持しており消費者の活発な消費意欲が継続していることがうかがえます。なお、2023年11月より15〜19歳を調査対象に追加したため、2023年5月以前の結果は参考値となります。また、2024年3月に発表した「11の欲望」※5のリニューアルを踏まえ、過去の指数も改めて算出しています。
〈「欲望未来指数」の推移〉
(2)「11の欲望」について
〈2025年11月調査における「欲望未来指数」と「11の欲望」の推移〉()内は前回比増減
「11の欲望」は、「心が動く消費調査」から得られたデータをもとに、人間の消費行動を駆り立てる感情を 「11の欲望」として可視化したもので、今回は7つの欲望が減少となりました。しかし、「欲しいもの・したいことがある」と答えた人の割合は68.3ポイントと前回比で1.5ポイント増加したため、欲望未来指数は前回並みを維持しています。消費者は「欲しい・したい」といった消費に対する前向きな気持ちを持ちながらも、自らの欲望を「満たしてくれるようなものに出会えていない」と感じていると推察します。
新型コロナウイルスの影響が大きかった2023年までは「2.無理のない自由への欲望」や「3.心身平常運転の欲望」に代表されるような「波風や浮き沈みの少ない、いつもと変わらない平穏」を求める欲望が上昇傾向でしたが、その2つの欲望は引き続きほぼ横ばい傾向となっています。
前回と比較して大きく減少したのは、欲望別に「4.わたしの役割でつながる欲望」(前回比−2ポイント)、「5.腕を磨いたから、腕試し欲望」(同−54ポイント)、「6.資本集中型消費欲望」(同−20ポイント)、「9.ホントはダメだけど、だって欲望」(同−20ポイント)です。
一方で、「11.あっ、コレわたしっぽい欲望」については前回比で3ポイント増、前年同月比では15ポイント増と大きく上昇しました。収集欲求や没頭欲求である「11.あっ、コレわたしっぽい欲望」がこの1年を通して高い状態を維持している状況は特徴的であり、「平成女児」ブームに代表されるような自分の過去や経験してきたものを再度楽しもうとする消費行動の広がりとも軌を一にしています。趣味や推し活、背徳消費など、自分の外側にあるものに向けた欲望が減少する一方で、「自分らしさ」や所有欲を満たしてくれるものへと、消費者の欲望の矛先が変化している様子がうかがえます。
2.「欲望トレンド2026」について
欲望トレンドは、DDDが提唱する「11の欲望」をもとに、最近の社会現象を欲望の観点から分析し、今後の日本社会における欲望が複数のトレンドに集約していくと予測したものです。さまざまなヒット商品や流行現象などと、DDDの独自知見やコンテンツ分析を掛け合わせて、消費者の内面にある満たされた気持ちや思考を抽象化することで、来年以降でトレンドになりそうな欲望の萌芽をキーワードとして抽出しました。
(1)セルフカルチャー消費の概要
多様性の受容が急速に進んだ昨今、消費者は「自分の個性がなければいけない」というプレッシャーにさらされています。また、情報爆発の環境の中で自分らしくあり続けるために、好きなものや自身の所属する文化を自分の中で再編集することで、自分らしさを身に付けるようになりました。
この再編集を伴う消費行動を、「セルフカルチャー消費」と命名しました。自分らしさの判断基準は、過去に自分が好きだったものを今の自分の目で取り入れる(例:「平成女児」ブーム)、熱狂する他者から学ぶことで自分に取り入れる(例:大阪・関西万博)などが挙げられます。
(2)「11の欲望」視点での考察
前述の通り、推し活に代表される「6.資本集中型消費欲望」や背徳消費に代表される「9.ホントはダメだけど、だって欲望」は前回比で減少傾向となっています。それに対して「11.あっ、コレわたしっぽい欲望」については直近4回の調査で右肩上がりの傾向が続いており、消費行動を通して「自分らしさ」を確認する機運が、消費者の中で高まっている様子がうかがえます。マーケティングの考え方としても、一方的に機能や優位性を訴求するよりも、「自分向けだ」「自分らしい選択だ」と思えるようなコミュニケーションが求められるようになっています。
DDDは今後も、人々の消費行動を駆り立てる「欲望」の視点を組み入れた消費者理解を追求し、より深いカスタマージャーニー(顧客の製品・サービスの購入に至るまでの過程)の設計や、PDCAの仕組みづくりなどの支援を通じて、企業のマーケティング活動の高度化・効率化に貢献していきます。
〈第11回「心が動く消費調査」概要〉
・対象エリア:日本全国
・対象者条件:15~74歳
・サンプル数:計3000サンプル(15~19歳、20代~60代、70~74歳の人口構成比に応じて割り付け)
・調 査 手 法:インターネット調査
・調 査 時 期:2025年11月7日(金)~ 11月12日(水)
・調 査 主 体:株式会社電通 DENTSU DESIRE DESIGN
・調査委託先:株式会社電通マクロミルインサイト
※1 人間の消費行動に強く影響を及ぼすドライバーとなる感情を「欲望」と定義し、消費者が消費に至る
までの動機や行動を研究した結果得た知見を、パートナー企業にソリューションとして提供するプロ
ジェクト
※2 2024年12月4日発表:電通、最新の「欲望未来指数」から消費意欲の活発化を予測
https://www.dentsu.co.jp/news/release/2024/1204-010815.html
※3 2025年7月17日発表:電通「欲望未来指数」で、消費意欲が引き続き高いという結果に
https://www.dentsu.co.jp/news/release/2025/0717-010913.html
※4 DDDでは、お金を払って買ったものや体験で、心が満たされたり、テンションが上がったり、感動・
刺激を受けたりなど、良い気分・気持ちが得られた消費を「心が動く消費」と定義。「心が動く消
費」の背景に人々がどのような「欲望」を持ち、それが人々の消費行動に影響を与え、次の消費にい
かにつながっていくかを定期的に調査
※5 2024年3月22日発表:DENTSU DESIRE DESIGN、人間の消費行動に影響を与える「11の欲望」
2024年版を発表
https://www.dentsu.co.jp/news/business/2024/0322-010704.html
以上















