「小さなジビエ工房」と銘打った解体処理施設を紹介する東川陽平さん=加茂郡八百津町伊岐津志、けものみち

 加茂郡八百津町で東京都出身の移住者による新たなジビエ解体処理施設の運営が始まっている。捕獲されたイノシシやシカといった害獣の多くが廃棄されている現状を変えようと、同町に移住した東川陽平さん(35)がジビエ解体処理施設「けものみち」を設置し、起業した。「ジビエを知ってはいるけど、体験したことがないという人においしさを伝えたい」と意気込んでいる。

 

 大学卒業後、東京で働いていたが、キャンピングカー製造のトイファクトリー(可児市瀬田)横浜店を訪れたのを機に、同社に転職を決めた。ディズニーとライセンス契約を結んだ特別仕様車の開発などに携わる一方、趣味の登山やトレイルランニングの途中で立ち寄った直売所でイノシシ肉と出合い、おいしさに感動。猟師から解体処理施設を見せてもらい、さらにジビエへの興味が高まった。

 関市の猟友会に所属してみると、会員の顕著な高齢化、ジビエの販路が限られていること、処理施設の少なさなどの課題が手に取るように分かった。ただ、自身が培ってきた営業やマーケティングの知識や経験が生かせると考え、起業を決意。2023年6月に「けものみち」を立ち上げた。賛同したトイファクトリーの藤井昭文社長の後押しもあり、同社創業の地の八百津町伊岐津志に解体処理施設を設置した。外から見えるようにガラス張りにし、町内でも、可茂地域でも2件目となる「ぎふジビエ解体処理施設・加工品製造施設」の認証を受けている。

 今年6月に稼働。自ら狩猟したり、仲間の猟師から持ち込まれたりしたイノシシなど月に6~7頭ほどを解体処理する。1頭を処理するごとに洗浄して、清潔な環境を保つ。肉はスライス肉やソーセージ、ベーコンのほか、犬のおやつのジャーキーに加工している。

 東川さんによると、同町だけでも年間約200頭、周辺を含めると年間千頭近いイノシシやシカが有害駆除されている。「駆除されると猟師に報奨金が支払われるが、埋められることが多い。肉としての利用価値を知ってほしい」と話す。

 ジビエは通信販売が中心だが、イベント会場へのキッチンカーでの出店を通してジビエのおいしさの普及に努めている。被害が増えているクマについても「いずれは持ち込みの話が出てくると思う。何らかの形で役に立てれば」と話した。

(中村芳紀)