観光船事故犠牲者の遺体が安置された施設前の献花台に、花を手向ける親子=29日、北海道斜里町

 北海道・知床半島沖の観光船事故で死亡が確認された女性(52)と、行方が分かっていない男性(60)は、岐阜県多治見市の自宅周辺の住民によると、今春に娘や孫と共に引っ越してきたばかりで、地域活動に意欲を見せていた。近隣住民は「これから仲良くなりたいと思っていたのに…」と悲痛な表情を見せた。

 男性は三重県南伊勢町の漁師町で育った。友人によると、5人きょうだいの次男で、父親は漁師だった。県内の工業高校を出て愛知県の私大を卒業。同級生の60代男性は「真面目で成績が良く、大学の学費はアルバイトをして自分で払っていた。4年できっちり卒業した」と振り返る。

 大学を出た後は関西のリース会社に就職。全国を転勤しながら家族を連れてたびたび三重の実家に帰ってきていたといい、近所の80代女性は「親思いのいい子。事故に巻き込まれたとしたらかわいそうだ」と声を落とした。

 多治見市市之倉町に引っ越したのは今春。50代女性によると「物腰が柔らかく落ち着いた夫婦」で、住民同士で「感じの良い方が来てくれてよかった」と話題になっていた。町内会に誘おうと女性に声をかけたという50代の男性は「すごく気さくで感じのいい人だった。これから一緒に行事をやれるかなと思っていた」と惜しむ。

 近隣の60代の男性は「家族の楽しそうな声が家から聞こえてきていた。北海道旅行は引っ越してきた記念だったのかもれない。本当に気の毒」と話し、町内会長の男性は「新生活の始まりだっただろうに、かわいそうだ」と声を落とした。

 観光船の遭難が分かった後の取材で娘は「自分たちもどんな状況か分かっていない。そっとしておいてほしい」と話していた。