奉納された瓦を手に復興への思いを新たにする東海恒明住職と姉の明子さん=岐阜市寺町、瑞雲院
火災で一部焼失した庫裏=2月、岐阜市寺町、瑞雲院

 戦国時代の美濃国守護代、斎藤妙椿(みょうちん)ゆかりの古刹(こさつ)「瑞雲院(ずいうんいん)」(岐阜市寺町)が、2月の火災で一部焼失した本堂の修復を目的に、葺(ふ)き替える瓦に費用の寄付者が願い事を書く「奉納瓦」を始めた。檀(だん)信徒だけでなく宗旨を問わずに善意を募り、地域と幅広くつながろうという考えだ。建立以来何度も戦火や災害に見舞われた寺は、再び復興に向け動きだした。

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 瓦の奉納は、住職の東海恒明さん(49)と姉明子さん(51)が発案し、修復費用を寄付してくれた人への感謝を形として残そうと、9月から瓦に願い事を書いてもらっている。東海住職は「地域に溶け込んだ寺として新たなご縁にしたかった」と振り返る。

 火災は2月1日午後7時30分に境内西側の庫裏(くり)(居住部分)での漏電により発生。火は約3時間30分間燃え、庫裏や書庫、本堂の一部を焼失した。けが人はいなかったものの、書院の史料が一部燃えるなど被害は大きかった。

 境内の修復作業は3月から始まり、現在は書院の解体を進めている。本堂の屋根瓦も焼けてしまったことから全て取り換えることになり、4750枚程度が必要という。

 千円で瓦1枚を奉納できる。境内で受け付けており、30センチ四方の瓦に墨で願い事と名前を書く。現在約200枚集まっている。瓦を葺くと願いは見えなくなるが、内側で保存される。

 瑞雲院は約550年前の建立以来、戦国武将の織田信長や徳川家康らによる戦に巻き込まれた。近代になっても1891(明治24)年の濃尾地震や、1945年の岐阜空襲でも焼失し、その度に檀信徒や地域住民に支えられ、再建してきた。今回の火災では戦後にできた本堂を建て直すことを考えたが、天井に戒名や名前が刻まれていたことから修復して残すことを選択した。東海住職は「戦後、空襲から復興する際に書かれたもの。当時の人の思いを残したかった」と話した。

 瑞雲院はインターネットでクラウドファンディングのサイトも作り、修復資金を募っている。葺き替え前の瓦を返礼品として支援者に送り、感謝を示している。明子さんは「瓦は100年、200年と続いていく。身近な寺になれるように精進したい」と誓った。

 【瑞雲院】 1467(応仁元)年、美濃国守護代斎藤妙椿が、主君土岐成頼の菩提(ぼだい)を弔うため、稲葉山(現金華山)山麓に臨済宗妙心寺派瑞龍寺を建立した。瑞雲院は瑞龍寺開山(寺を開創した僧侶)の弟子、天縦宗受(てんしょうそうじゅ)が開いた周辺の小寺「塔頭(たっちゅう)」に当たり19代続く。戦国時代から戦乱や災害で焼失と再建を繰り返し、太平洋戦争の岐阜空襲の被害を受けた。現在の本堂は1956年に完成した。