名古屋・ゴールド争覇でパドックを周回するストーミーワンダーと渡辺竜也騎手。後方は永森大智騎手騎乗のケイマ

 競走馬は勝ったり、負けたりで「けがなどなく無事にゴールして、戻ってきてくれることが一番」とは、馬主さんや管理する調教師、厩務員さんたちの切実な願い。名古屋の重賞に挑んだ笠松のストーミーワンダー(牡5歳、笹野博司厩舎)は本来の走りを発揮できずに敗戦を味わった。陣営もファンもショックだったが、体調を万全にして、11月21日の笠松グランプリに向けて巻き返しを図りたい。

 地方全国交流重賞のゴールド争覇(SPⅠ、1400メートル)が10月29日、名古屋競馬場で行われ、高知からの遠征馬ケイマ(牡6歳、別府真司厩舎)が、永森大智騎手騎乗でスイスイと逃げ切った。2着ポルタディソーニ(牝5歳、瀬戸口悟厩舎)に5馬身差をつける完勝だった。ストーミーワンダーは得意のロングスパートのスイッチが入らず、末脚は不発。4着に敗れて、5連勝はならなかった。

高知のケイマ(永森騎手)が1着でゴールを駆け抜け、名古屋・ゴールド争覇を制覇した

 笠松グランプリのトライアルで、1番人気ケイマの強さが際立った。JRA時代の初勝利は3年前。笠松に遠征し、交流戦・カンナ賞(国分恭介騎手)で圧勝しており、覚えているファンもいるのでは。高知に移籍後は、女性ジョッキーとして今春デビューした濱尚美騎手で連勝。その後も負けなしで、重賞は4連勝となった。永森騎手は「乗りやすくて操縦性がいいところが武器。まだまだ強くなる馬で、次はもっといいパフォーマンスを見せたい」と、権利を得た笠松グランプリへの意欲を示した。2着ポルタディソーニに騎乗し、地元馬最先着へと導いた宮下瞳騎手は、何度も「よく頑張ってくれました」と、愛する牝馬の快走をたたえていた。

渡辺騎手が騎乗したストーミーワンダー(7)は、勝ったケイマから離された4着に終わり、連勝はストップした

 笠松期待のストーミーワンダーは、名古屋のカツゲキキトキト、園田のタガノゴールドと各地区の大将格を撃破。ゴールド争覇では2番人気となったが、前走・姫山菊花賞(園田)で見せた圧勝劇は再現できず。向正面7番手からスパートを開始したが、いつもの爆発力はなく、直線でも4着に流れ込むのが精いっぱい。先行馬を追って3、4番手にはつけてほしかったが...。

 騎乗した渡辺竜也騎手は「手応えがいつもと違った。グイグイと掛かるぐらいの馬ですが、1~2コーナーで息が入らなかった。勝った馬が強かったです。どんなペースでも対応でき、位置取りはまあまあで、3コーナー手前から上がっていくかと思ったが、(きょうは)いかなかった。もっと前へ仕掛けていけば良かったかも。次の笠松グランプリで勝てるように頑張りたいです」と、気持ちを切り替えていた。

レース後、悔しそうな渡辺騎手と笹野博司調教師

 ストーミーワンダーは、これまで1600メートルがベストで8戦8勝。1400メートル以下では14戦して7勝と、敗戦も半分あった。今回はやはり距離不足が敗因だったのか。ここ3走は1600~1700メートル戦で、笹野調教師は「調教から状態はいい感じでしたが、1400メートルは久々だったので...。折り合い重視でやってきて、(好位から)いつも掛かる感じで上がっていくんですが、3~4コーナーで反応がなかった。追い切りは前回と同じで良かったし、調子自体は悪くなかった。次は予定通り、笠松グランプリに向かいます」と、敗戦にも前向きだった。

 その笠松グランプリは1400メートル戦。全国から豪華な顔ぶれがそろうが、再戦となるケイマの先行力は、経験済みの笠松コースでは脅威になりそうだ。地の利を生かしたいストーミーワンダーは、最後の直線で宿敵ケイマとの一騎打ちに持ち込みたい。渡辺騎手には、「毎回勝てる訳じゃないから。次は頑張って」と声を掛けたが、この悔しさを発奮材料として、リベンジを果たしたい。主戦の佐藤友則騎手は南関東に遠征中だが、レース展開や調教面でのヒントを受けるなどしてストーミーワンダーの闘志に火をつけたい。

笠松に続いて名古屋でも、安部幸夫厩舎の馬で勝った水野翔騎手

 名古屋競馬では、笠松のジョッキーの参戦も多く、渡辺騎手が今年13勝、佐藤騎手が9勝を挙げている。ゴールド争覇前の秋の香特別では、水野翔騎手がモズオラクル(牡4歳、安部幸夫厩舎)で逃げ切りVを決めてくれた。「人馬一体、グイグイと『疾風迅雷』で勝てました」とにっこり。安部厩舎の馬では、「(笠松で騎乗した)アマゾンチャックに続いて、また勝っちゃった」とうれしそうで、相性がいい。厩舎からの信頼も高まり、今後は名古屋馬での騎乗が増えそうだ。この日は藤原幹生騎手が2着、大塚研司騎手は11番人気の馬で3着と見せ場をつくっていた。

 羽島市出身の新人・浅野騎手うれしい初勝利
 名古屋の若手ジョッキーといえば、羽島市出身で10月15日にデビューしたばかりの浅野皓大(こうだい)騎手に注目したい。今津博之厩舎に所属し、もうすぐ(11月7日)19歳になる。身長166センチとジョッキーとしては長身で、10月29日のレースでは、デビュー後3回目となる2着もあった。騎乗数が少ない中で健闘。笠松でも自厩舎のアメージングハートで1レース騎乗し9着だったが、今後は参戦も増えそうだ。

名古屋競馬で10月にデビューした新人の浅野皓大騎手。羽島市出身で、11月1日にはうれしい初勝利を飾った。名古屋のほか、笠松でも騎乗していく

 笠松や名古屋での所属厩舎を希望していたそうで、「地方競馬教養センターに入って1年ぐらいして、今津先生に声を掛けてもらえました」。ジョッキーを目指したきっかけは「笠松競馬場には、小学生の頃から父によく連れられて行っていた。佐藤騎手や東川公則騎手らの騎乗ぶりを見て、ジョッキーに憧れるようになりました。(4月にデビューした)東川慎騎手とは笠松ライディングスクールで一緒に乗馬をしていました」と振り返ってくれた。

 当面の目標だった初勝利については、自厩舎の有力馬での騎乗もあり、「今開催中に達成したいです」と意欲。その言葉通り、11月1日の第1R、1番人気のダイセンヒーローで1着ゴール。1並びでのうれしいデビュー初勝利となった。初騎乗から35戦目。期待に応えられ、ホッとしたことだろう。「笠松には、自厩舎の馬を使うことがあったら、また行けそうです」と闘志を燃やしていた。地元出身のジョッキーであり、笠松でも見掛けることがあったら、熱い声援を送ってほしい。

 JRAの競馬学校騎手課程では、15歳の田口貫太君が見事に合格し、来年4月入学予定である。笠松競馬元騎手で名馬ミツアキタービンを管理していた田口輝彦調教師の息子さんだ。母も元騎手(中島広美さん)で、笠松初の女性ジョッキーとして120勝を飾る活躍を見せた。「両親がジョッキー」という遺伝子を受け継いで、貫太君は合格者8人(男5人、女3人)という狭き門を突破。将来のJRAジョッキーを目指して、じっくりと騎乗技術を磨いて、デビューの日を迎えたい。

 笠松競馬の次回開催は5~8日の4日間。7日には、地方全国交流重賞のラブミーチャン記念(1600メートル、SPⅠ)が行われ、2歳牝馬によるフレッシュな戦いが繰り広げられる。また、4日・浦和で行われる地方競馬最大のレース「JBCクラシック」には、笠松の3歳牝馬・ナラ(湯前良人厩舎)が、松本剛志騎手騎乗でチャレンジ。厳しい戦いにはなるだろうが、大舞台で思い切ったレースを見せてほしい。