自民党総裁選について新聞や電子版記事を読み込む生徒
新聞や電子版記事を読み込み、総裁選候補者の立場や派閥の論理について理解を深める生徒ら=いずれも岐阜市大縄場、岐阜高校

 NIE実践校の岐阜高校は、2022年度に高校で主権者教育のための必修科目「公共」が新設されることを見据え、教材として新聞記事を活用している。生徒らは政治情勢を分析するために新聞などで資料やデータを読み込み、根拠を基に自分の考えを構築した上で、仲間と合意形成に向けて話し合う力を高めている。

 選挙権を持つ年齢が18歳に引き下げられ、22年4月からは成人年齢が18歳となるため、学校現場では主権者教育の指導方法や教材研究への関心が高まっている。

 「『合意形成で論戦』という見出しがあるね。候補者の主張はどうなっているのだろう」。実践校2年目の昨年9月、1年生の「現代社会」で、菅義偉氏、岸田文雄氏、石破茂氏で争う自民党総裁選を取り上げ、生徒による模擬投票も実施した。加藤健司教諭(26)=現代社会科=が公約や政策を詳しく理解するために新聞を配布すると、生徒らは憲法、社会保障、経済、外交などの視点から分析し、グループごとにワークシートにまとめた。

 生徒は「3候補とも憲法改正に前向きな姿勢を示している」などと、政策の特徴や傾向を話し合った。安倍政権(当時)の方針に対して候補者間の温度差が浮き彫りとなった経済や安全保障については、スマートフォンで経済専門誌や海外紙の電子版記事を読み込み、3候補の論点を"深掘り"する姿もあった。

 授業は、国のかじ取りを担おうとする各候補の背景にある立場や派閥の論理を、生徒たちに理解させ、対立と合意の視点から各自の考えを明確にさせるのが狙い。選挙制度の在り方や合意形成の図り方は、生徒会選挙でも課題となったテーマだったため、生徒らは"自分事"として活発に議論した。

 総裁選の模擬投票実施に関して、加藤教諭はアンケートを集計するアプリ「Forms」を活用し、生徒の意見を集約。大型選挙の際に、世論調査や出口調査の結果が公開され、有権者の議論のきっかけになっていることを参考にした。模擬投票の前に「どのような期待や不満を抱えているのか」、投票後には「どの候補に投票したのか」を、アプリを使ってクラス内で情報共有した。結果を分析する中で、加藤教諭は「生徒には人種や所得による格差や『社会の分断』にまで踏み込んで考えてほしい」と話す。

 議論だけでなく書く力も伸ばす。昨年度から夏季休業期間に、「環境保全と経済発展」「外国人労働者の受け入れと国内のニートの増加」など、互いに影響し合って解決が難しい社会問題について、生徒が新聞記事を基にレポートで論述している。NIE担当の井上智也教諭(31)は、「新聞は、高校生も『集団』の一員であることを自覚し、政治や社会へ積極的に参加する力を身に付けることができる教材。積極的に活用したい」と強調した。