豪雨の避難行動に関するアンケートの記事について、浅野伸保教諭(右奥)から説明を聞き、課題を考える生徒=関市桐ケ丘、関商工高校
タブレット端末に表示される仮想のホワイトボード。クラス全体の意見の流れを各自で確認できる

 土木技術者を目指す生徒が多い関商工高校(関市桐ケ丘)建設工学科では、新聞記事と情報通信技術(ICT)の活用を通じて、災害対応や避難誘導についての授業に取り組んでいる。

 関市の津保川が氾濫した7月豪雨から3年となることから、水害をテーマに「社会基盤工学」授業の一環でNIEを実践。生徒たちは事前に、インフラ整備の技術者らを招いた出前講座で、災害避難の図上訓練を体験。ハザードマップを基に避難経路の危険箇所を探るなど、警戒レベルや命を守る行動について学んだ。

 6月中旬に新聞を使った授業があり、出前講座で身に付けた水害への備えや知識をどのように周知し、素早い避難につなげるかを話し合った。担当の浅野伸保教諭(40)は「行政や土木業者の働きを知る出前講座を『学びのインプット』に、新聞学習を『学びのアウトプット』に位置付けた。住民の視点に立って考えを共有し、実際に避難行動を促せるようになれば」と狙いを語る。

 授業では、2020年7月の九州豪雨で指摘された浸水域の危険性の周知不足や、岐阜県がまとめた7月豪雨での避難行動に関する県民アンケートの記事(2021年4月14日付の岐阜新聞)などを取り上げた。生徒たちは記事を読み、グループごとに危機意識を高める避難の情報伝達について、タブレット端末を用いて考えた。オンライン会議アプリ「Meet」で、仮想のホワイトボードが使える機能を利用。各自の意見を色分けして表示したり、画面を切り替えて別グループの意見を見たりと、リアルタイムで進む話し合いの流れをクラス全員で共有した。

 世代によって利用するコンテンツが異なることに着目した亀山康太さん(17)は、年齢層に合わせた災害への注意喚起を提案。「高齢者にはケーブルテレビや新聞、回覧板を通じた周知、『スマホ世代』と呼ばれる若年層には会員制交流サイト(SNS)で周知を図るのがよい」とした。屋外や居住地以外の場所で突然の豪雨に襲われる可能性を指摘した林千里さん(17)。ハンドサイズのハザードマップの必要性について「自宅の壁や冷蔵庫に貼る形のものではいざという時に活用できない。常時持ち歩きできる携帯用があると役立つのでは」と訴えた。各自は、関連性のある提案や対策をタブレット画面上で整理しながら、考えを深めた。

 継続的に新聞学習に取り組む浅野教諭は、実業高校によるNIEの意義を強調。「想定を超える災害に見舞われた時、その被害や課題を解決するためにはどうしたら良いのか。タイムリーで生々しい新聞記事の情報に向き合うことで、積み上げてきた学習や経験が問われることになる。自分なりの考えや解決手段を身に付け、主体性を持った人材を育てる一つの方法がNIE」と話した。