参院選で3選を確実にし、支持者に囲まれる渡辺猛之さん=10日午後8時1分、岐阜市薮田南、選挙事務所
敗戦の弁を述べる丹野みどりさん=10日午後8時26分、岐阜市神田町、選挙事務所
敗戦の弁を語る三尾圭司さん=10日午後8時35分、岐阜市西野町、選挙事務所
支持者に敗戦の弁を語る広江めぐみさん=10日午後8時3分、岐阜市清住町、選挙事務所

 10日に投開票され、自公の政権与党が改選議席の過半数(63議席)を上回る議席を獲得した参院選。岐阜選挙区(改選数1)でも、自民現職で国土交通副大臣の渡辺猛之さん(54)=公明推薦=が組織力を見せつけ、圧勝での3選を果たした。一方、国民民主の丹野みどりさん(49)ら野党などの新人4人は岸田政権の批判票が分散し、惨敗。野党側は戦後初めて県内を地盤とする野党系国会議員が不在となった昨年秋の衆院選の雪辱を果たせず、1年を切った統一地方選に向けて課題を残す結果となった。

▽開票結果(改1―立5)=選管最終

当 452,085 渡辺猛之  自現
  257,852 丹野みどり 国新
   74,072 三尾圭司  共新
   49,350 広江めぐみ 諸新
   22,648 坂本雅彦  N新

 岐阜選挙区では、自民現職の渡辺さんが県内をくまなく回る選挙活動と雄弁な演説で「保守王国」の支持基盤を固めながら、無党派層などの支持も獲得。5人が立候補した中で得票率50%超と、現職副大臣としての貫禄を示す票差で3度目の当選を果たした。

 与野党の現職2人が1議席を争う2016年参院選の激戦から一転、9年ぶりに野党候補が競合したこともあり、公示前から最大の敵は組織の「緩み」となった。陣営幹部は来春の統一地方選を意識させたほか議員や党支部、友好団体、職域ごとに期日前投票の投票済証を集めるノルマを課して引き締めを図ったが、楽観ムードから、地域ごとに徹底ぶりには温度差が出た。

 渡辺さんは「広い岐阜の全県一区の選挙。楽な戦いではない」とかぶとの緒を締め、培ってきた演説力とひたむきな遊説活動で支持をつかんだ。18日間で42市町村の全てを回り、2期12年の実績に地元への感謝も織り交ぜる小気味よい演説で聴衆を引きつけ、酷暑の中でも懸命に訴える姿は好感を与えた。

 象徴的だったのは投票日前最後の日曜日となった今月3日。「自身最多」となる1日18カ所での街頭演説に挑んだ。発案した野田聖子こども政策担当相は、渡辺さんに同行。「コロナ(感染)の心配もある。一カ所にたくさん集めて格好つけるより自分たちが頑張ればいい」と話し、軽やかに支持者たちに駆け寄った。陣営によると、この日の街頭演説には計約1300人が集まった。

 いち早く渡辺さんに推薦を出した公明党との連携も追い風になった。個人演説会や街頭演説では公明党の議員も参加し、「選挙区は渡辺、比例区は公明」と二人三脚で保守層を固めた。

 安倍晋三元首相が銃撃され亡くなった事件を巡っては、県連幹部が早々と選挙運動の自粛を決めたのに対し、陣営内部から「暴力に屈するべきではない」と反発が出るなど混乱もあったが、選挙戦最終日には必要最少限だけ街頭演説に立つ折衷案で逆に結束を強めた。

 当選を決めた10日夜、武藤容治県連会長は来春の統一地方選を視野に「県一体で山積する問題を前に進めていく。それが安倍さんの無念を晴らすことになる」とし、大勝にも「期待を裏切らないよう、謙虚におごりなく粛々とやりたい」と冷静に語った。

◆反自民分散、県内野党国会議員の不在続く

 岐阜選挙区で9年ぶりに野党が競合し、候補者を一本化する「共闘」は実現しなかった今回の参院選。与党との対立軸を生み出せず、自民批判票は分散して惨敗を喫した。昨秋の衆院選から続く、県内を地盤とする野党系国会議員は不在の状態が続く結果となった。来年の統一地方選に向けて組織を立て直し、存在感を高めることができるのか-。県内野党は瀬戸際に立たされている。

 「知名度のある候補者を擁立したが、結果を出せず申し訳ない」。国民民主新人の丹野みどりさんの落選を受け、選対本部長の伊藤正博国民県連代表は唇をかみしめた。

 政府予算案や内閣不信任決議案の対応を巡り、国民民主と立憲民主の党本部間の協議は不調に終わった。県内では国民県連と立民県連、連合岐阜が候補者調整を進め、丹野さんの擁立でまとまった。立民県連は、常任顧問だった山下八洲夫元参院議員が詐欺などの疑いで逮捕されたことを受けて、丹野さんへの推薦は見送り、所属議員や党員が個人的に支援する対応にとどめた。市議らは丹野さんと一緒に街頭演説に立ち、渡辺嘉山代表は「県内では3組織による協力体制を示せた」と一定の成果を強調するが、与党に対抗できるうねりは生み出せなかった。

 一方、「野党共闘」で2016、19年の過去2回の参院選でいずれも候補者を取り下げた共産県委員会は今回、新人の三尾圭司さんを擁立した。松岡清委員長は「(政府予算案に賛成した)国民は野党ではない」と切り捨て、野党候補の競合は解消されないまま選挙戦に突入。自民圧勝という厳しい結果となった。

 戦後初めて県内を地盤とする野党の国会議員を失った衆院選から約8カ月。参院選も結局、野党は存在感を示すことができなかった。連合岐阜の幹部は「反自民ではあるが、共産とは一緒にやれない」と話し「参院選では比例票の掘り起こしも大切。今回はこの形で、ある意味よかった」と割り切った。

 来春には統一地方選が迫る。野党側は体制の立て直しが急務だ。伊藤代表は「自民党との差は地方議員の少なさ。1人でも多くの候補を擁立する」、渡辺代表も「3組織での連携を深めつつ、訴え方を考え直す必要がある」と危機感をにじませる。松岡委員長も「野党共闘は必ず成立させなければならない。党勢拡大を進めたい」と指摘した。