河川敷やキャンプ場などの夏のレジャーとして人気のあるバーベキュー。岐阜県は4軒に1軒程度の割合でバーベキューコンロを所有しているとされるほど、全国でも有数のバーベキュー愛好家の多い県だ。バーベキューはアウトドアを前提にしていることから、グッズはそのまま震災など災害に遭って電気やガスが使えなくなった際の調理グッズとしても活用できる。そこで岐阜新聞社デジタル報道部は、地震が起きた想定でバーベキューを行ってみて、被災時に注意する点を検証してみた。当初の想定と異なり、調理する食材選びで苦戦する結果となった。

 

 「庭でキャンプができる家」を提唱し、被災した際の備えとしてもバーベキューグッズの保有を呼びかけているハウスメーカー、三承工業(岐阜市)の協力を得て岐阜市のモデルハウスで実施。夕方、自宅にいたら地震が発生し、電気が使えなくなったという想定で行った。アウトドア好きの家の設定で、雨水タンクも備え、庭はテントが張りっぱなしの状態でスタート。テントの横にはバーベキューグッズを入れてある箱を常時置いてある。バーベキューグッズも同社が緊急時を想定して推奨している物を使わせてもらった。

調理する食材をサイコロステーキに決めて焼き始めるK記者

思いもよらず食材選びで苦戦

 挑戦したのは30代のK記者と20代のI記者。K記者はテントなどを所有しているが、年に1回キャンプに行くか行かないか程度。I記者はバーベキューコンロを持ってはいないが、年に1回くらいキャンプに行く。岐阜県在住者としてはごく平均的なバーベキューに親しむ人たちで、完全な素人ではない。またグッズが充実した中での挑戦だったので、当初はスムーズにいくかと思われた。

 ところが予想外にも苦戦。まず動きが止まったのが、調理する食材選びだ。電気が来ていなくて冷蔵庫が動かない設定のため、「冷蔵庫に保管していた食材を少しでも無駄にしないように足が速いものから調理したい」。そうすると肉ばかりを焼くことになって味にも栄養にも問題がある。別に非常食も用意してあるが、長持ちする非常食をすぐに使ってしまっていいものかも悩む。「何を調理すればいいのか」。いつ電気が復旧するか分からない中で決断するのは困難だった。

 またすぐに腐りそうなプチトマトは食べることに決めたものの、混乱しているため洗うのはどうしようかと悩むことに。「雨水タンクはあるから雨水で洗ってしまうか、緊急用に用意してあるペットボトルの飲み水を使ってしまうか」。トマトくらい洗わなくてもいいし、気になるようなら焼けばいいという普段なら思いつきそうなことすら思いつかない。

食パンやトマトを焼くI記者

 最終的に食パンとソーセージ、サイコロステーキ、プチトマトを焼き、非常食のチキンカレーも雨水を使って湯煎することにした。調理に取りかかってから1時間10分で完成。貴重な水の使用を減らすため、食器にサランラップを巻いてから盛り付け、食後に皿を洗わなくても済むよう工夫もした。ただ焼いただけなのでそんなに時間がかかる料理ではないはずなのに、迷ったりもたついたりしてかなりの時間をかけてしまった。被災した際に冷蔵庫にある食材をどの順番で使い、どんな料理を作るのか。今回の検証で最大の課題であることが分かった。作った料理も違うものが良かったのか。次からさらに検証していきたい。

グッズの場所でももたつき

 もう一つもたついた理由は、グッズを借りたことにあった。どこにどんなグッズがあるかが、すぐには分からない。仮に自宅であっても、普段からどこにグッズを用意しておくかしっかり決めておかないと、同様にもたつく原因になりそうだ。今回は万全のグッズを使わせてもらったが、もちろんきちんと使える状態に維持しておくことも大切だろう。例えばガスコンロのガスが切れていないかなど、こまめにチェックしておく必要がある。

 また地震の規模が大きくて余震が続きそうな場合は、火を使うだけにもちろんバーベキューはやめておいたほうがいいだろう。今回は検証するためだったから地震が発生してすぐに調理に取りかかったが、本来なら状況を見てバーベキューで料理を作るかどうかの判断も求められる。

完成した料理。食材選びでもたついた=いずれも岐阜市柳津町丸野

 執筆している私、鈴木の実家は、2000年と2011年の2回、床上浸水の被害に遭った経験がある。この時、いただいたおにぎりがとてもおいしく、ありがたかった記憶がある。これが温かい料理になれば、なおさら被災して不安になった気持ちを落ち着かせてくれることだろう。調理ができるレベルの被災であれば、バーベキューグッズで温かい料理を作ることができる。食材選びなど被災時ならではの課題はあるものの、被災時のバーベキューには心と体を落ち着かせる効果がありそうだ。

鈴木隆宏(すずき・たかひろ) 出版社、経済専門紙を経て2011年に岐阜新聞社入社。経済担当記者をメーンに、本社遊軍や可児支局、西濃支社にも勤務。6月からデジタル報道部。