7月1日に高山線の特急「ひだ」でデビューしたJR東海の新しい特急車両「HC85系」。旅好きの岐阜新聞記者も、デビューの翌日、高山発名古屋行きのHC85系に乗った。その乗り心地と車窓から見えたものは―。乗車体験記をお届けする。

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 いつか見た光景だった。あの時と同じ感情が、記憶の片隅を掘り下げる。

 そう、2011年3月12日に全線開業した九州新幹線。そのCMの光景だ。CMは、公開直後に東日本大震災が起きたことで取りやめになったが、次第にYouTubeなどを介して広く浸透。通り過ぎる新幹線に向かって何百人、何千人という沿線の人たちが喜びと歓迎の気持ちをカラダ全体で表したあの光景は、未曽有の災害で暗く沈んだ日本社会に明るい光を与えてくれた。

午前8時発の特急「ひだ」4号で、高山から岐阜へ。もちろんHC85系=高山市、JR高山駅

 それと似ていた。JR東海の新しい特急車両「HC85系」が7月1日、岐阜県内を走る高山線の特急「ひだ」でデビューした。もともと、「ひだ」は外国人観光客が多く、間もなく2年半になろうとするコロナ禍で旅客数が半減。アフターコロナに向けて再起を図ろうとする中での待望のデビューとなった。飛騨高山観光の新たな〝橋渡し役〟への沿線地域の期待は、記者も実際に乗車することで感じ取ることができた。

駅弁と土産と写真撮影、旅のわくわく感味わう

 デビューの日、名古屋駅で一番列車の出発を見届けた記者。幸いにも、その日の夕方、高山市内で別の取材があった。そのため、HC85系のデビューを伝える記事と写真、動画を出し終えると、そのまま名古屋駅から高山駅へ。行きは、旧式の特急気動車「キハ85系」に乗って向かった。

 せっかくなので県民割を利用し、高山に1泊。翌朝の高山発「ひだ」4号で岐阜に帰った。もちろん、HC85系だ。どうせならと、グリーン車に乗った。

HC85系デビュー記念弁当など、高山の土産物を買い込んでスタンバイ

 高山駅で金亀館の限定駅弁「HC85系デビュー記念弁当」や高山の土産物を買い込んでスタンバイ。どの人も、駅ホームで列車の正面をパシャリとスマートフォンで撮影してから乗り込んでいる。旅に出る前のわくわく感。久しぶりに味わう感覚だ。

 ひだ4号は夏の日差しを浴びながら、午前8時ちょうど、発車。地鳴りのような静かな重低音と空調の音が車内を包み、かすかな振動が伝わってくる。停車駅では、エンジンを止めてアイドリングストップ。路線バスのようにブロロンと車体を震わせて再び走り出した。行きのキハ85系とは明らかに違う。意識をすれば感じられるという程度の音と振動だ。