ボクシングスクールを開設した上西晃生さん=岐阜県池田町、町総合体育館
フランスで試合に臨む上西晃生さん(左)
試合で勝利するフランス時代の上西晃生さん(左)

 古代ギリシャの哲学者・プラトンが提唱した「弁証法」。対話を通じて一つの真理を目指すことをいうが、「ボクシングは互いに素晴らしい試合をつくる弁証法的な営み」と説く“ボクサー兼哲学者”が、岐阜県揖斐郡池田町にいる。3月にフランスから移住し、町内で「トップランク岐阜ボクシングクラブ」を立ち上げた上西晃生さん(41)。フランスでボクシングと哲学を学んだ異色の経歴の持ち主が、岐阜でどのような世界を開くのか―。注目が集まっている。

 

 上西さんとボクシングとの出合いは2003年。神奈川県の音楽大学3年生の頃だった。自宅近くのジムに入ってプロを志したが、両親の反対もあって断念。ならばと、もともと関心があった総合芸術を究めようと渡仏し、現地で哲学と出合って一念発起。パリ第8大学に入学した。

 ボクシングは続けた。勉学の傍ら腕を磨き続け、博士課程に進んだ13年から4年間は、競技に専念。世界ボクシング評議会(WBC)バンタム級王者にも輝いたノルディーヌ・ウバーリ選手も在籍するパリ郊外のジム「B.C.TOPRANK BAGNOLET(バニョレ)」にも所属した。フェザー級の個人戦や団体戦の計5試合に出場し、2勝3敗の成績を残した。

 その後は再び学業に戻り、11年間に及ぶ博士課程の満期退学を機に妻の実家がある池田町へ移住した。愛知県の大学で講師の職を得たが、ボクシングについては「コロナ禍で現役が終わることが悔しかった」。フランスの子ども向けボクシング教室を参考に、自宅近くの体育館で教室をスタートさせた。

 教室名は、フランスで所属したジムの許可を得て「トップランク」の名をとった。初心者向けの「ボクササイズ部」に加え、本格派向けの「ボクシング部」も用意。現在は9~60歳の初心者の男女約10人に教えつつ、日仏の架け橋となる構想を描いている。

 ボクシングは格闘技ではあるが、哲学者・上西さんにいわせると「思慮や慈悲と向き合う紳士的なスポーツ」。教室は、池田町小寺の町総合体育館を拠点としており、「どんな年齢の人でも楽しめる。まずは一度参加してほしい」と話す。