飲食店の休業で明るさを失った玉宮通り。午後7時台で深夜のような雰囲気だ=12日午後7時35分、岐阜市住田町

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて「まん延防止等重点措置」が適用されている岐阜県。岐阜市など16市町の飲食店に対しては、午後8時までの時短営業のほか、酒類を提供しないよう要請が出されている。各店の反応は、街の様子は-。要請の猶予期間最終日の11日と、本格的に始まった12日の夜、岐阜市の歓楽街を歩いた。

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 市商工課によると、市内の時短営業対象店は3611店。このうち柳ケ瀬地区が682店、玉宮地区が374店で、市内の約3割を占めるという。柳ケ瀬と玉宮の夜は、どう変わったのだろうか。

 11日午後7時30分、柳ケ瀬商店街。既に多くの飲食店が夜の営業の取りやめや休業を決め、店を閉めていた。通りに男性がいた。バーの店主だ。開封したばかりの生ビールのたるを使い切るため、猶予期間最終日まで酒を提供。常連客が"最後の一杯"を味わっていたという。男性が近くのすし店を紹介してくれた。

 寿司よし。のれんをくぐると、カウンターに常連の男性が1人いた。仕事帰りによく立ち寄るが「8時までだと時間がぎりぎり」とぼやく。店主の佐藤義之さん(75)によると、酒が提供できないことを伝えると諦めて帰ってしまう人もいるようだ。話し込んでいると、閉店時間の8時が迫ってきた。「ごめんよ。閉めなあかんで。密告もあるで」と促されて退店。さっとシャッターが閉まった。

 午後8時40分、玉宮通り。閉店後の片付けをしている男性に声を掛けた。焼き肉店若葉屋玉宮本店の店主熊田耕一さん(42)。暗い通りを見て「コロナ禍前の平日深夜0時ぐらいの雰囲気ですよ。もう見慣れましたけどね」とぽつり。

◆キャッチ「お酒あります」

 JR岐阜駅の方向に向かって歩いていると、若い男性に声を掛けられた。「お酒も大丈夫ですよ」。客引き(キャッチ)だ。通常通り営業している居酒屋があるらしい。店内の様子を見てみようと、言われるがままについていく。

 店に入ると、サラリーマンや学生風のグループ計3組15人ほどがテーブルを囲んでいた。酒を飲んでいるせいか、声が大きい。懐かしい光景だ。外の静けさと店内のにぎやかさの差に、複雑な気持ちになる。

 入店してしまったので要請の猶予期間だと自分に言い聞かせてハイボールを1杯注文。20分ほどで退店した。今後の予定を店員に聞くと「やっちゃいます」とのこと。協力金では売り上げをカバーできず、酒を提供しながら深夜まで営業するという。店員は「頑張ります」と小さく拳を握ってみせた。外に出ると、男女3人組が同じようにキャッチの案内でビルに吸い込まれていった。

◆「岐阜をつぶさんといて」

 翌12日は冷たい雨。猶予期間が終わり、この日から休業する店もあるようで、玉宮の夜は前日よりもさらに閑散としていた。

 カメラを手にして歩いていると、若い男性が近寄ってきて「岐阜をつぶさんといてくださいよ」と恨めしそうに忠告していった。酒を提供していた例の居酒屋は、変わらず営業しているようだった。客が酒を持ち込むことができるようにするなど、「酒の提供」に当たらない方法をひねり出している店があるという話も聞いた。

 1年半前は誰もが、にぎやかに酒を酌み交わしていた岐阜市の歓楽街。まさか通常の居酒屋に潜入取材することになるとは。この異様な光景は、本当に要請の期限となる今月末で見納めとなってくれるのだろうか-。コロナの収束を願うばかりだ。