清水昭治会長(左)も参加した昨年の最終審査=岐阜新聞本社
かべ新聞のレイアウト例

◆情報を収集し活用する力も

 新聞は、さまざまな情報を多くの人に知らせることを目的に作られます。そのため、新聞を作る際は、相手や目的に応じて調べたことなどが伝わるようにさまざまな工夫をすることが大切です。見出しを付けたり、写真・絵・図・表などを使ったり、新聞ならではの「割り付け」をしたりします。新聞コンクールでは、これらの工夫が評価されることが多いと思いますし、コンクールである以上、そうあるべきだとも思います。

 しかし、その一方で、新聞を作るという活動が、教育的にいかに有意義であるかということや、新聞を作る過程で「育まれる力」について、理解を深めていく必要があるのではないかと思います。とりわけ新学習指導要領の全面実施が目前に迫っている今だからこそ、いま一度その意義について、皆で考える価値があると思いますし、その結果、学校や家庭での新聞作りの裾野を広げることになると思います。

 小学校4年の国語の教科書の「新聞を作ろう」と題した教材では、最初の手順として、新聞の特徴を確かめた上で、「何についての新聞にするか、どんな話題をのせるか、だれに読んでもらいたいかなどを考え、具体的に書く内容を決める」と示しています。

 この「どんな新聞にするか」「どんな話題や内容にするか」について、子どもが考えることで、自分と地域社会や国家、国際社会等との関わり、自分と取り上げる事象やそれに携わる人々との関わりに目を向ける力や、その関わりの中で、考えなければならない問題を発見する力が育まれます。例えば地域の伝統文化を話題としたならば、その素晴らしさやそれを保存する人々の努力に目を向け、今後の継承の在り方や自分の関わり方を考える力が育まれます。

 次に教科書は、「書く内容に応じて取材をする」よう手順を示していますが、取材をすることを通して、自分の書きたい内容に応じて、情報を収集する力や適切な情報を取捨選択する力が育まれます。また事前に取材をする相手や機関に対して、アポイントメントや写真撮影の許可をとるという社会性や行動力も育まれていきます。さらには、集めた情報をどのように処理すれば分かりやすいかを考えて表現する力が育まれていきます。小集団で新聞を作る場合には、よりよい新聞を求めて、話し合ったり役割分担したりして、他者と協働する力も育まれていきます。これらの力は、新学習指導要領で身に付けるべき資質や能力に他なりません。

 このように新聞作りを通して「生きる力」が育まれることが、より多くの方に理解され、学校や家庭での取り組みがいっそう充実し、「第4回かべ新聞コンクール」に、多くの優れた作品が寄せられることを願っています。

(興文中校長)