三尾和廣さん著の「我が友野生のクラック」

 1970年代前半から81年にかけて、岐阜県中津川市北部の阿寺山地に通い野生のニホンカモシカを観察した三尾和廣さん(72)=ペンネーム、土岐市=が、「我が友野生のクラック あるニホンカモシカの記録」を文芸社から出版した。クラックと名付けたカモシカを追い続け、他の動物からの襲撃、母親との別れなど7年間の生態を、素朴につづっている。

 82年に自費出版した本の一部を改訂して刊行した。前作の寄贈を最近になって国会図書館に求められ応じたところ、ネットで問い合わせを受けることが増えたのがきっかけという。

 三尾さんは付知町出身。20代の頃、片方の角が折れたカモシカの存在を猟師から聞き、ナンシーと名付けて生態を追った。ナンシーが産んだのがクラックで、あどけない幼獣時代から成長を見守った。

 クマタカやキツネ、野犬に襲われ、岩場を登り逃げる様子や、ナンシーが子別れのためにクラックを角で追い威嚇する様子も記した。ヒノキの食害問題を受けて国内初のカモシカの麻酔銃捕獲が決行され、逃げ切るクラックの様子も見守った。雪崩に巻き込まれるのを見た時は生存を絶望視したという。

 本ではこうした事実に加えて、最後に1章、フィクションでクラックが絶命するシーンを加えた。他のカモシカが射殺された情景をもとに描写し、「読んだ人が心動かされる物語にしたかった。野生動物の最大の敵は人間。自然との共生について考えてもらえたら」と話す。

 四六判、138ページ。1210円。