亡くなった女性宅で保護された猫。当初は20匹ほどおり、多頭飼育崩壊に陥っていた=可児市内
不妊去勢手術のため、移動手術車で猫を預かる獣医=土岐市内

 岐阜県可児市の住宅で昨年11月、1人暮らしで身寄りのない70代女性が亡くなった。女性は、猫が繁殖し過ぎて十分に世話ができない「多頭飼育崩壊」に陥っていた。残された約20匹の猫の健康を管理し、譲渡までの道筋をつけたのは、保護活動を行うグループ。メンバーは「寂しかったのだろう」と女性をおもんぱかる一方で、適切な飼い方ができなかったり、野良猫にむやみに餌をやったりすることが多頭飼育崩壊を招くと警鐘を鳴らす。現場を取材した。

◆ごみ屋敷、猫は飢餓状態

 鼻を突く異臭、散乱する菓子袋や生活用品-。「猫がいるはず」という地域住民からの連絡を受けた市職員が亡くなった女性の家を確認すると、そこは「ごみ屋敷」のような状態だった。家の中に14匹、外に5匹おり、さらに近隣住民が別の1匹を保護していた。外にいた5匹のうち4匹は雌で、全て妊娠していた。

 異臭の正体は猫の糞尿。散乱したごみは、飢餓状態の中で懸命に食べ物を探し回った跡だった。女性が亡くなった約2週間後、市の依頼を受けて、可茂地域を中心に猫の保護活動を行う「Kamoにゃん会」がこの住宅に入った。代表の生田節子さん(59)は「(猫が)よく生きていたと思うほどの状態だった」と振り返る。

 会が中心となり、保護した猫は不妊去勢手術を受け、譲渡されたり保護施設に引き取られたりした。全てが解決したのは、女性が亡くなってから約7カ月後のことだった。

不妊去勢、適切な飼い方を

 身寄りのない高齢者が多頭飼育に陥る例は少なくない。各地で問題となるたびさまざまな対応策が挙がるが、メンバーの鈴木恵美子さん(45)は「猫を飼わないよう呼び掛けるなどして、お年寄りから猫を飼う楽しみを取り上げるのは違う」と指摘。「心のよりどころを奪うより(不妊去勢など)適切な飼い方をしてもらうことの方が大切」と力を込める。

 土岐市の女性(49)は今月13日、自宅周辺にいる猫の不妊去勢手術を行った。近所の人が、不妊去勢をせずに飼い猫を外に出していたとみられ、餌を与えられていた猫が繁殖。20匹以上が周辺にいたためだ。

 女性は、飼い主の許可を得て保護に乗り出し、飼い主のいない猫を中心に不妊去勢を専門に行う会員制動物病院「にじのはしスペイクリニック」(岐阜市)の移動手術車を呼んで8匹の猫を不妊去勢。生田さんや周囲の協力で実現した。女性は「(当初は)捕獲方法も不妊去勢の相談先も知らなかった。どうしていいのか分からない人は他にもいるはず。知識が広がれば、少しは多頭飼育を防げるのではないか」と話す。

 手術費用は計約7万5千円で、女性が立て替えた。保護活動では、こうした費用はメンバーが個人で負担する場合がほとんどで、経済的負担も重くのしかかる。生田さんは「行政との連携を深めたい。行政から報告してもらえれば、飼い主の家に出向いて飼い方や不妊去勢までの動きを教えることもできる」と、予防につながる指導啓発の重要性を強調する。