患部のMRI画像。破線円内が頸椎椎間板ヘルニア

整形外科医 今泉佳宣氏

 これまで4回にわたって腰椎椎間板ヘルニアのお話をしました。椎間板ヘルニアと聞くと「腰の病気」というイメージが強いと思いますが、頸椎(けいつい)の病気にも椎間板ヘルニアがあります。

 首の骨である頸椎は七つあります。頸椎は頭や顔を支えると同時に脳からつながる脊髄の通り道であり、かつ脊髄を保護しています。腰椎と同様に頸椎にも椎体と椎体との間に椎間板と呼ばれる軟骨があります。そして頸椎の椎間板も中心部に髄核があり、その周囲に線維輪と呼ばれる組織があります。椎間板に繰り返し負荷がかかることで線維輪に亀裂を生じ、そこから髄核が脱出することで症状を起こすことは腰椎椎間板ヘルニアと同じです。

 頸椎椎間板ヘルニアが腰椎椎間板ヘルニアと異なるのは症状です。腰椎においては片側のお尻から下肢後面にかけて痛みを生じるのですが、頸椎においては主に片側の上肢の痛みやしびれを生じます。これは椎間板ヘルニアが脊髄から枝分かれしている神経根を圧迫することによります。また椎間板ヘルニアが脊髄を圧迫している場合は両上肢や両下肢のしびれを生じることがあります。そのほか痛みやしびれに加えて上肢に力が入りにくくなることもあります。

 これらの症状に加え、首を後ろに反らしたり、痛い方に傾けたりすると上肢の痛みやしびれが増強します。医師はこうした症状を基に、上肢の知覚や筋力などを調べてこの疾患を疑い、画像検査を行います。画像検査は通常の頸椎単純エックス線写真に加えてMRI検査を行います=画像=。MRIで椎間板の明らかな突出を認めた場合は容易に診断できますが、椎間板の突出が軽度な場合には診察所見と画像検査所見とを照らし合わせて診断します。

 治療の基本は薬物療法です。腰椎椎間板ヘルニアと同様に鎮痛剤を使用します。通常、治療開始から3カ月以内に痛みやしびれは軽減します。しかしながら3カ月を経過しても痛みやしびれが続く場合や上肢の筋力低下がある場合は手術を行います。

(朝日大学保健医療学部教授)